ウクライナ大統領、首相に盟友アザロフ氏指名で体制固め

ミコラ・アザロフ首相〔AFPBB News〕

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 2011年に入ると、ミコラ・アザロフ首相自ら、価格フォーミュラ内のベース価格450ドルに対する不満を公言し、ロシア政府に交渉を持ちかけている。

 アザロフ首相はさらにプーチン氏との個人的会話を根拠に「ティモシェンコ前首相は自らの債務4億5000万ドルと相殺するため高いガス価格でロシアと合意した」と断罪し、ティモシェンコ氏個人に調印の責を負わせる方向に向かい始めた。

 2011年3月には「2009年契約調印に関する臨時調査委員会」が議会に発足し、なぜかティモシェンコ氏がかつて社長であった「統一エネルギーシステム・ウクライナ社」の債務問題も調査対象に加えられた。

 同社は1995年から97年にかけ、ガスプロムから輸入した天然ガスをウクライナ市場に販売する業務(いわゆる「ガストレイダー」)を展開しており、その際に得られた莫大な利潤が今日のティモシェンコ氏の活動資金となっていると噂されている。

 同時に同社は多額の対ガスプロム債務も抱えており、債務相殺としてロシア国防省に商品を供給する契約を結んだ。

 しかし、ティモシェンコ氏側が同省高官に贈賄し、商品価格を水増しさせたとの贈収賄罪に問われ、ロシアで逮捕状が出たおまけまでついた(ガストレイダー業については、拙稿「ウクライナの天然ガス市場―ガストレイダーを中心にして」『比較経済体制学会年報』、Vol.39 , No.1を参照)。

 今回の裁判の目的が、価格の引き下げではなく、ティモシェンコ攻撃にあるのは明らかだ。

 仮にウクライナ司法がティモシェンコ氏に責任を課し、「強要下にあった契約は無効」と決定したところで、契約のもう片方の当事者であるガスプロム社が価格の引き下げにつながる契約解除に応じる可能性はないからだ。

 ロシア側に契約見直しを求めるなら、ウクライナ側は何らかの交換条件、例えば関税同盟への参加やガスパイプライン所有権の提供をする必要があろう。

 現在、ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権は、支持率の低下に喘いでいる。