筆者が10月24日昼過ぎに「『最悪期まだ』『市場閉鎖も』ルービニNY大教授が警告」を作成してから数時間で、株価や為替相場はまたも「メルトダウン」の様相を呈することになった。
日経平均株価は8000円を大きく割り込み、終値は7649.08円(前日比▲811.90円)。1日に800円ずつ下げ続けると、単純計算で、10日で「なくなってしまう」計算になる。
ドル/円は3月17日につけた直近ドル安値95.77円を割り込んで円高が加速し、94円台に。ユーロ/円は大台を次々と割り込み、午後3時半すぎに120円台となった。市場の需給バランスが著しく悪化しており、市場の体をなしていない感が、強く漂っている。ルービニ教授が言及したヘッジファンドによる大量のポジション解消の動きと、リスクテイクできる投資家の欠如から、売りが出ると支えられない相場展開が続いている。
緊急対応として考えられる「市場閉鎖」「円売り介入」について、このタイミングで筆者なりに若干コメントしておきたい。
(1)市場閉鎖
ルービニ教授が言及した「市場閉鎖」はおそらく、株式市場閉鎖のことだろう。2001年9月11日(火曜)の米同時テロ事件発生後、同日の午前9時40分(米東部時間)から14日(金曜)いっぱいまで約4営業日、米国内の株式市場は閉鎖された。12日以降の取引停止については、NYSE、アメリカン証券取引所、ナスダックがSECと協議して決めたと、当時報じられている。日本でも、12日の東証は30分遅れの取引開始となったが、政府が東証の閉鎖を検討していたという報道も出ていた(2001年9月12日付 朝日夕刊)。週明け17日(月曜)から取引が開始されている。それまでの間、債券や為替の取引は、米国でもそのまま継続されていた。
(2)円売り介入
日本の通貨当局による円売りドル買い介入は、2004年3月16日に678億円規模で行われたのを最後に、途絶えている。
現在の為替相場は、円高局面であると同時に、ドル高局面である(10月20日作成「『崩落』にあらず」参照)。ドル安局面であれば協調介入は行いやすいと考えられるが、円高局面ということになると、協調介入は実現しにくい。問題はグローバルなものであり、円高はいわば「火事の末端」で付随的に起きている現象である。実現の可能性が高いのは、日本の通貨当局が米財務省の容認姿勢を確認した上で、単独で円売りドル買い介入を行うケースであろう。
だが、ここで注意しなければならないのは、(1)株式市場閉鎖、(2)円売り介入ともに、政策としての効果は結局のところ、「時間稼ぎ」にしかならないということである。
(1)について言えば、一時は2兆ドルに迫ったとされるヘッジファンドの全方面でのポジション解消の動きは、市場閉鎖が終了すれば、再開されるだろう。また、(2)介入については、サプライズ効果は当初だけの時限的なものにとどまり、回数を重ねれば重ねるほど、効果は薄れていく。介入の効果が発揮されるにはマクロ経済政策との組み合わせが有効ということになり、日銀の利下げをパッケージで実現できないか、という話になってくるものの、仮に日銀が理屈をつけて0.25%利下げに踏み切っても、米FOMCが次回会合で0.5%利下げに踏み切れば、日米金利差は0.25%縮小してしまう。
「時間を稼ぐ」からには、何か抜本的な政策がその先に用意されている必要があるのだが、そうした兆候は今のところまったくない。かといって、株式市場取引を長期にわたって停止し、為替相場を固定相場制にしてしまうわけにもいくまい。
金融市場はいま、前例のない、厳しい環境に置かれている。各国それぞれにおいて、最も信用度と流動性が高い国債が大幅に買われていく需要が潜在しているとみる。