「軍事施設や軍人の写真は撮らないで下さい」
平壌に到着した日に北朝鮮人ガイドから指示された。穏やかなガイドだったが、写真を「撮るな」というくだりの語気は強かった。
どこの国でも軍事施設を一般公開するほど寛容ではないが、少なくとも米軍は本土をはじめ沖縄の基地の撮影をすべて禁止しているわけではない。ガイドの言葉は「秘密主義の国」であることを改めて示していた。
北朝鮮は昨年、金正日の三男である金正恩を後継者としてほぼ決定した頃から、打ち上げ花火のように軍事的挑発を繰り返している。2010年3月には韓国哨戒艦「天安」を撃沈し、11月には延坪島砲撃事件を起こした。
今後、北朝鮮からの挑発サイクルは短くなる
今年に入ってからは、2月の米韓合同軍事演習前に、板門店代表部が「もし侵略者(米韓)が挑発してくるのなら、ソウルは火の海になる」という声明文を出してさえいる。
北朝鮮を訪れる1カ月ほど前、脱北者の金光進(キム・クワンジン)氏から話を聞く機会があった。氏は亡命前、労働党の中央委員会組織指導部という政府中枢にいた人物で、金体制への批判を口にした。
「今は経済破綻への道を歩んでいるように見えます。まして金正日から金正恩への体制移行が順調にいくとは思えません。そうした負の部分を覆い隠すために軍事挑発に出ているのです。今後、挑発行動のサイクルが短くなると思っています」
そして訪朝する直前、北朝鮮は韓国側に次のような内容の警告文を送っていた。
「(韓国軍は)軍事境界線のある非武装地帯(DMZ)領内に事前連絡なく入り、北朝鮮を挑発している。こうした行為を続けるならば、人的被害を含むあらゆる結果は韓国側が負うことになる」
交戦も厭わない強気の態度である。