激怒の小泉が巻き返し、ブレて迷走した麻生

麻生首相、防衛大卒業式で訓示

巻き返した小泉元首相(左=参考写真)〔AFPBB News〕

残り0文字

 とはいえ、鳩山も水面下で慎重に根回しを進めるべきだった。元首相・小泉純一郎がこの動きを察知して激怒、西川続投で巻き返しに出た。麻生側近の選対副委員長・菅義偉も西川更迭には反対し、麻生に直訴した。

 事態収拾のため、麻生は一時、鳩山も西川も更迭する「けんか両成敗」に傾いた。だが、西川を辞めさせれば、郵政民営化推進に賛成する自民党内の中堅・若手議員が猛反発し、党内の混乱は必至だった。元幹事長・中川秀直らが「麻生降ろし」に動くことも懸念し、止むなく麻生は鳩山だけを切ったのである。

 「首相はナイーブで人に意見を聞き過ぎる」。鳩山がこう言うように当初、麻生は鳩山の意見に耳を傾けたが、最終的には小泉や菅の進言を聞かざるを得なかった。持論がないから、直近の進言に左右されてしまい、発言がブレまくるのか。「ブレ」と「迷走」はまるで麻生の代名詞になったようだ。

政権交代なら、日本郵政の「闇」が明るみに?

千葉市長選は民主圧勝、都議選・衆院選に向け自民党に危機感

「ブレ」と「迷走」が代名詞に(参考写真)〔AFPBB News

 「西川を辞めさせて、新しい社長の下で日本郵政が徹底的に調査されると、同社がこれまで隠してきた『闇の部分』が明らかにされる。小泉や竹中(平蔵元総務相)はそれを恐れている」。国民新党の幹部はこう指摘する。一体、「闇の部分」とは何なのか。

 鳩山は辞任後も「(日本郵政には)不透明さの中に巨悪が潜んでいる臭いはある。国民のために郵政の汚れた部分を追及しなければいけない」と記者団に強調している。ただ、「闇の部分」や「巨悪」はまだぼやっとした疑惑にとどまり、本当に違法行為があったのかどうか定かではない。

 問題の発端は2008年末、日本郵政がオリックス不動産と結んだ「かんぽの宿」70施設などの一括売却契約だ。土地代と建設費で約2400億円に上るものを約109億円で一括譲渡する契約に対し、鳩山は「待った」をかけた。

 鳩山の疑問は(1)なぜ不況時に売る必要があるのか、(2)なぜ一括して譲渡するのか、(3)なぜ郵政民営化を推進したオリックス会長・宮内義彦の関連会社に売るのか――というものだ。鳩山は「国民が『出来レース』と思うのではないか」と日本郵政を批判。契約は白紙撤回となったが、契約をめぐる西川の説明は鳩山の疑問を納得させるものではなかった。

 「郵政」という国民共有の財産を民間に安値で払い下げ、そのプロセスが不透明だとして、民主、社民、国民新の野党3党有志議員は2009年5月15日、司法の場に訴えた。「かんぽの宿を不当な廉価で譲渡し日本郵政に財産上の損害を加えようとした」と糾弾、特別背任未遂罪などで東京地検に刑事告発したのだ。6月8日には、日本郵政専務らの告発にも踏み切っている。

 「郵政民営化の名を借りて、不正にうまい汁をすすっていた者がいるということだ」と国民新党のある告発者は語る。郵政民営化見直しを求める同党幹事長・亀井久興は「辞める必要のない鳩山が辞めて、辞めなければならない西川が辞めないのはどう考えてもおかしい」とテレビ番組で憤りをあらわにした。

 一方の西川は「不正は全くない」と反論しているが、「西川体制で日本郵政の不正が見つかるはずもない」と国民新党の幹部は指摘する。もし将来、西川が辞任したり、あるいは政権交代が実現すると、郵政民営化の「闇の部分」は明るみになるのか。日本郵政の利権をめぐり、民営化推進派と見直し派の激しいバトルが続いている。