読者の皆さんは2008年1月の中国製冷凍ギョーザ中毒事件を覚えておられるだろうか。事件発覚後も中国の関係当局は中国国内で殺虫剤が「混入された可能性」をほぼ一貫して否定してきた。今も事件の真相は闇の中である。
中国に蔓延する「偽装隠蔽」体質
2008年といえば、8月の北京オリンピックだ。大々的にTV放映された開会式での花火は、実はCGの合成映像だったらしい。また、式典での美少女の歌も別の少女歌手の歌に合わせた「口パク」だった。担当者は後に「国益のための措置だった」と中国国営テレビに釈明したそうだ。
たかが「ショーの演出」ではないかと言うなかれ。こうした小さな嘘も、多くの被害者を出したギョーザ中毒事件の真相否定も、「中国株式会社」の隅々にまで蔓延する「偽装隠蔽」という氷山の一角に過ぎない。
まずは、筆者自身が見聞きしたことから書いていこう。
筆者がこの中国社会の救い難い「病理」に気づいたのは、北京在勤時代の2003年のことだ。最近日本でも豚インフルエンザ騒ぎで多くの人がマスクを着けていたが、当時の中国も、これと同じように、SARS(重症急性呼吸器症候群)と呼ばれた新型肺炎の大流行で一時騒然となっていた。
当時の日記を読み返してみると、同年4月3日、SARSの蔓延が噂されていたにもかかわらず、当時の衛生部長(大臣)は記者会見で「中国への出張や旅行、会議なども安全である」と胸を張っていた、とある。
ところが、軍病院の内部告発により、4月20日にはSARS感染者数が364人、そのうち18人が死亡していたことが判明した。翌21日には北京市長と衛生部長が解任される。報告の遅れや虚偽報告の責任を問われたのだ。
その後、公表されたSARS患者数は一気に1000人を超えた。一体何を信じたらよいのか、分からなくなった。当時、北京の日本大使館に勤務していた筆者は、「日本人初のSARS患者になったら申し訳が立たない」と本気で悩み、仕事どころではなくなったことをよく覚えている。
あれから6年、こうした中国特有の情報操作・偽装隠蔽体質も少しは改善されたと信じたいのだが、実態はどうもそうではないらしい。