がんにならないためにはどうすればよいのか? 単一の答えが明白にあればこれほど楽なことはないが、複雑な要因が絡み合って生まれてくるだけに、簡単にはいかない。
がんは2段階を経て発生すると考えられている。まず、正常細胞の遺伝子を傷つけ、がんの芽を作り、次にがん化を促進する要素が作用することでがんが発生する。前者の作用を持つものをイニシエーター(発がん物質)と呼び、後者の作用を持つものをプロモーター(発がん促進物質)と呼ぶ。
イニシエーターとしては、活性酸素、放射線、紫外線、ウイルス、たばこなどがあり、プロモーターとしては、過剰な脂肪、アルコール、食塩の摂取、ホルモン、たばこなどが知られている。
すべてのイニシエーターやプロモーターを生活から完全に除去することは不可能だ。しかし、生活習慣を改善することで、リスクを低減することは可能だ。その秘訣を、予防医学を専門とする、健康増進クリニック院長の水上治先生に話を聞いた。
がんに関する論文や文献が満載
今回、水上先生が推奨してくれたのが「がん予防10か条」。これは、米国の「世界がん研究基金」から2007年11月に出版された、がんに関する4400の文献論文集「食べもの、栄養、運動とがん予防」の中で提言されているものだ。
「世界の権威者の論文が掲載されている素晴らしい本で、私のバイブル的一書になっています。膨大なデータが収められており、非常に科学的です」(水上院長)
日本では、がん予防というと、何かしらあやふやで信憑性の低いものと考えられがちだが、こうした論文や文献にはもっと目を向けるべきではないか。ネットで閲覧することもできる。
第1条から10条まで2回にわたって紹介するが、ここには喫煙は含まれていない。なぜなら喫煙はあらゆるがんの発生率を高めることはもはや常識であり、あえて10か条に明示するまでもないという考えのようだ。
喫煙の有害性については次回詳しく触れるが、がんの発生の3分の1は喫煙が要因だと言われている。