人間は過ちを犯す動物である。そして、過ちには顛末がある。善因楽果・悪因苦果、自業自得・・・。いわゆる因果応報だ。

 しかし、多くの苦労や失敗を経験したり、幾多の過ちを犯した人間の方が、そうでない人より、悟りの境地への到達は近いそうだ。なぜなら、悔恨が人に垂訓するからだという。

 人間は、その命の尽きるまでの間に、どこまで悟りの境地や真理に迫ることができるのだろうか?

 中世のヨーロッパでガリレオ・ガリレイは地動説を唱え、無期刑の有罪判決を受けた。しかし、宗教裁判後に「それでも地球は回っている」と呟いた。科学的手法の開拓者は、死後も名誉は回復されず、カトリック教徒として葬ることも許されなかった。

 しかし、ガリレオはローマ教皇庁よりも真理に迫っていた。

 かつての大航海時代、「地球が丸い」ことを初めて実証したのは、ポルトガルの航海者、探検家、フェルディナンド・マゼランである。マゼランは南米大陸の南端を発見し、その後、彼が通り、世界史を変えた海峡は「マゼラン海峡」と呼ばれることになる。

 太平洋を発見したマゼランは、航海の途中、フィリピンで戦死するが、残された艦隊が史上初の世界一周を達成する。

 パタゴニアにあるチリ最南端の都市、プンタアレーナス。町の中心にあるアルマス広場では、大砲に足をかけたマゼランの銅像が空を見上げている。

「世界の果て」の都市

 パタゴニアはチリとアルゼンチンにまたがって広がる、風吹きすさぶ大地である。吹き荒れる暴風は最大瞬間風速が60メートルに達することも珍しくなく、嵐の大地とも呼ばれている。

 パタゴニアの南端にある島がフエゴ島だ。チャールズ・ダーウィンがビーグル号で地球一周航海をした際の経路であるビーグル水道、南米最南端の岬として有名なホーン岬、南米と南極の間にあり荒れる海として知られるドレーク海峡、そしてマゼラン海峡と、様々な海の流れが、フエゴ島を取り囲んでいる。

 島の中心の街、ウシュアイアには、「fin del mundo(世界の果て)」と表記された標識がある。この世界最南端の小さな街は、南極遊覧の拠点となっている。シーズンとなる11月から3月にかけて世界中から観光客が押し寄せ、この辺境の街の小さな空港は、ブエノスアイレスに次ぐ旅客の利用数を誇るという。

世界最南端の都市、ウシュアイア

 ウシュアイアには日本人宿がある。私が宿泊すると、その日のベッドは全て埋まった。

 この宿はバックパッカーの間では有名な日本人宿のようで、長期滞在者が多い。私が泊まった時の宿泊客のほとんどは、まだ20代前半から30歳前後と若い。一輪車に乗りながらジャグリングする特技を持ち、スペイン語が堪能な青年もいれば、挨拶すらまともにできない若者もいる。狭い居間の空間で互いに沈黙し続けているのも虚しいので、礼を欠くその青年に話しかけると、今春から教員に採用され、教壇に立つという。

 また、声の大きい元気な女は、旅先で出会った白人男性をとっかえひっかえして楽しんでいるらしく、その写真を誇らしげに同性の宿泊客にひけらかす。来年の就職活動を控えたマスコミ志望の女学生だというが、この女もいずれ誰かと結婚して子どもを生むのだろう。