「火事だ! ○△で家が燃えている」

 日本では火事が発生すると、地域の危機管理システムが動き出します。自治体関係では消防車が出動し、警官も駆けつけます。ここまでは全国共通ですが、農村部では他に住民も動き出します。消防団に召集がかけられて消火作業に当たり、火事場のすぐ近くの家には近所の主婦が集まり、おにぎりやみそ汁を作り始めます。

 鎮火して消防署職員が現場を去った後、消防団員にはおにぎりやみそ汁が振る舞われます。腹を満たしたら、その地を管轄する消防団が現場に残り、残り火が再び燃え上がらないか一晩中監視します。朝になると消防団員はふだんの仕事に戻ります。

 さらにもう1つ、火災発生時に動き出す組織があります。JA(農協)です。

 支店長クラスの人が、早ければまだ家が燃えさかっている時に、遅くとも消防署員が帰る頃にはやって来ていて、ぼう然としている被災者の傍らに寄り添います。共済(火災保険)の保険金を出す仕事があるからです。

 JA職員は、被災者の宿泊先の手配や、がれき処理などの相談にも応じます。同じようなフットワークの軽さを持てる民間の保険代理店は、それほど多くはありません。

金融自由化を先取りしていたJA

 小泉郵政改革の頃から、規制緩和の次の標的はJAだと言われていました。2010年にも、内閣府の行政刷新会議に設置されている規制・制度改革分科会の農林・地域活性化ワーキンググループは、JAの農業部門と金融部門を分離する提起を行いました。しかし、JA中央会などの反対を受けて撤回されています。

 JAから銀行や共済(保険)といった金融事業を分離することは、金融業界からも高い関心を持たれているでしょう。なぜなら民間金融業界にとって、農家は、日本に残された数少ない未開拓市場だからです。