民主党の新代表が鳩山由紀夫前幹事長に決まった。岡田克也前副代表は代表選で猛追したものの、29票差で敗北。選挙結果は大方の予想通りだが、世論の期待は裏切られた。鳩山は幹事長に岡田を充てる一方、選挙担当の代表代行に小沢一郎前代表を起用。代表辞任後も小沢は党の実権を握り、事実上「院政」を敷くつもりだろう。小沢にとっては、思惑通りの展開になったと言えよう。(敬称略)

民主党新代表に鳩山由紀夫氏

「挙党一致」を強調、民主党新代表の鳩山氏〔AFPBB News

 「小沢さんは民主党を次の総選挙で勝利する体質に導いていただきたい。岡田さんは代表選で見事な、さわやかな戦いをした。挙党一致体制をつくり上げることが大事だ」

 代表選翌日の5月17日、鳩山は党人事決定後の記者会見でこう述べた。党運営の要となる執行部に岡田を加え、挙党体制をアピール。また、小沢を代表代行に迎え入れ、次期衆院選対策を委ねた。代表代行の菅直人と輿石東(参院議員会長)は留任させた。

 鳩山、小沢、菅の「トロイカ体制」と輿石、岡田の5人による、集団指導体制で党運営に当たる。しかし代表代行の中では、小沢が筆頭格となり、5月11日の代表辞任からわずか6日後に復権を果たした。

「顔」代わっても、小沢が実権維持

 民主党は「顔」が代わり、岡田が要職に就いたものの、党内体制は実質的に何も変わらない。小沢が選挙対策を担うことで、党のカネや実権を維持しそうだ。

 選挙対策といえば、本来は幹事長の役割だが、小沢と岡田は基本的な分担を了解済み。今後、2人の間で多少摩擦が生じるかもしれないが、岡田は政権交代を最優先するため、党内混乱を避けてじっと我慢するのではないか。小沢にどこまで言いたいことが言えるのか。鳩山の指導力や岡田の政治家としての器量が問われよう。

 これで次期衆院選で政権交代を果たしても、「小沢首相」の実現は事実上なくなった。しかし小沢にとっては、むしろ望ましい事態かもしれない。仮に民主党が政権を奪取しても、小沢が首相として予算委員会で長時間答弁に立つ姿を想像するのは難しいことだった。

 健康不安という理由もあるし、表に出てマスコミから叩かれるより、裏で実権を握る方が小沢にはやりやすく、理想的な形なのだ。ただ、小沢が実権を握る「二重権力構造」に対し、自民党から批判が強まるのは必至だろう。

ミス・ユニバース日本代表、麻生首相を表敬訪問

一時は支持率回復したが・・・〔AFPBB News

 世論が鳩山新体制をどう評価するかがポイントになるが、少なくとも鳩山が小沢より好感を持たれているのは間違いない。

 鳩山新代表の選出を受け、朝日新聞が16~17日実施した世論調査によると、衆院比例代表の投票先では民主が38%(前回32%)に上昇。これに対し、自民は25%(同27%)に減少した。「どちらが首相にふさわしいか」では首相・麻生太郎の29%に対し、鳩山が40%を記録。その一方で、代表交代で民主の印象は「変わらない」が75%に達し、「よくなった」は16%にすぎない。

 国民はよく見ている。民主党が変わっていないと、4人に3人が回答するのだから。同時に小沢辞任は好感しており、麻生や小沢より鳩山の方がマシとも考えている。もし、小沢に距離を置いてきた岡田が代表に選出されていれば、民主党の支持率はもっと上がっただろう。

民主「裏で小沢」の選挙態勢、危機感強める自民

 当初、自民党は鳩山が民主党代表に就けば、「間違いなく小沢院政、二重権力になる」(自民党選対副委員長・菅義偉)といくらでも批判できるため、「与し易し」と予想していた。だが、それは必ずしも正しくない。