(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年11月7日付)

メラニア夫人(右)、次男の夫人であるララ・トランプ氏(左)と大統領選勝利を喜ぶトランプ氏(11月6日、写真:AP/アフロ)

 カマラ・ハリスの活気、喜び、楽観主義、ハリウッド流の笑顔もこれまでだ。米国は取引を拒んだ。

 4年前、勝利を収めたジョー・バイデンはドナルド・トランプのことを「異常な瞬間」として片づけた。

 トランプが米国の選挙人団に加えて一般投票でも勝利する公算が大きいことから、歴史は間違いなく今、この称号をバイデンに与えるだろう。

 何しろ、トランプは米国史上最も知名度が高く、綿密に捜査された大統領指名候補の一人だ。

 彼を1度選ぶことは偶然だったかもしれない。2度選ぶとしたら、目をしっかり開いて選んだことになる。トランプは正当な次期大統領だ。

米国がトランプを選んだ理由

 問題は、それがなぜかだ。

 物語の大きな柱は、十分な数の米国人がトランプの売り込んだものを求めたということだ。

 不法移民の大量強制送還、グローバル化の終焉、アイデンティティー(社会意識に目覚めた「ウォーク(woke)さ」として知られるもの)に対するリベラル派エリートの自虐的なアプローチに中指を立てる侮辱といったものだ。

 これらすべてのものが、トランプの人格について有権者が抱くどんな疑念をも上回る重みを持った。

 米国が重罪で有罪判決を受けた犯罪者、それも前回の選挙の結果を覆そうとしたことでも起訴され、独裁者をあからさまに崇拝している人物を大統領に選んだことには、2通りの解釈ができる。

 有権者はトランプがもたらすリスクを真剣に受け止めていないか、または国をどんな状況に陥らせるかをはっきり知りつつ、それでも現状より望ましいと考えているか、どちらかだ。

 いずれにせよ、トランプの再選は民主党にとって存亡にかかわる大惨事だ。米国の同盟国にとっての歴史的なゲームチェンジャーでもある。