中国・浙江省烏鎮で、人工知能(AI)「アルファ碁(AlphaGo)」との対局に臨む柯潔氏(2017年5月23日撮影、資料写真)。(c)AFP 〔AFPBB News〕

囲碁AI「AlphaGo」が人間の最強碁棋士を破ったニュースはまだ記憶に新しい。ここからコンピュータが人間の能力を上回るとされるシンギュラリティが現実味を帯びてきた。最近では多方面でAIが人間の代わりに仕事ができることを証明している。人間は「どの職業なら生き残れるのか?」と戦々恐々としている。

コンピュータは疲れることを知らない

AIの強さは膨大なデータ処理能力だ。碁の対決では、AIは過去のあらゆる対戦データを大量に読み込んだ。人間が経験するなら数百年分に相当する量だという。AIは不老不死で対決をひたすら続けた仙人のような存在に近いのかもしれない。

膨大なデータを読み、あらゆるパターンから最適解を出すのはAIが得意とするところだ。AlphaGoで使われた機械学習をGoogleのデータセンターの電力消費に適用したところ、ファンや窓の開閉などで最適解を導き出し、40%もの節電効果を出せたという。AIの知能は効率性を高めるところに役立つ。

がん治療にも生かされている。膨大な研究論文やデータから、症状に合わせた最適な治療法や薬を探している。どんなに優秀な医師でも全ての論文を読み解くのは不可能だが、コンピュータならできる。がんに限らず、あらゆる難病で最適な治療法が見つかるかもしれない。

AIは記者デビューも果たした。海外メディアではAIがスポーツ記事を書いている。膨大なデータを読み、学習することで、例えば野球なら試合の行方を分けたプレーを判断し、試合結果の記事を作成している。株式市場の動きや天気予報など、定型的で短い記事ならAIが担うことができそうだ。

なにせコンピュータは疲れることを知らない。サーバーが適切な状態で電気を供給している限りは休みなく働いてくれる。膨大な単純作業を任せるなら最適だ。今のところは。

AIは新たな雇用やビジネスを生み出す

ただしAIが碁で人間を上回ったように、AIの高度化は脅威ともみなされている。「人間しかできない」と思われていた人間にとっての安全地帯はどこにあるのか分からなくなってきた。例えば「匠の技」と言われる超絶技巧もAIやロボットの強化学習で可能となるかもしれない。

強化学習とはAIとロボットに「扉を開ける」「けん玉を棒に入れる」など目的を与え、試行錯誤を繰り返して実現するための方法を見つけさせる学習方法だ。現在は単純なレベルだが、そのうちに人間でもできないような正確さや緻密な作業ができるようになるかもしれない。

そうなるといよいよ「人間はどうしたらいいか」と思えてしまうが、人間は歴史を振り返るとイノベーションを繰り返して新しい仕事を生み出してきたことも忘れてはならない。移動手段が馬から車に代わり、馬の周辺で仕事をしていた人は減ったが、新たに車を製造したり車を運転したりする仕事が生まれた。コンピュータが生まれることでプログラマが生まれ、Webが普及することでWebデザイナーやSEO対策コンサルタントが生まれた。

デジタル・トランスフォーメーションは既存の業界と雇用を大きく揺るがしているものの、新たなビジネスや雇用や可能性も生んでいる。ウーバーやリフトなど車のシェアリングサービスでタクシーの運転者は打撃を受けたが、代わりに人々は便利に移動できるようになり、車は有効活用されている。AIが普及したら、AIに伴う仕事や役割も生まれるだろう。