米国のEV(電気自動車)メーカーであるベンチャー企業テスラ・モーターズ(Tesla Motors)のEVは、1台につき「18650」規格のリチウムイオン電池のセルを約6800個(「Roadster」)~約8000個(セダン「モデルS」)搭載している。

テスラの電気自動車「モデルS」

 このセルは、ノートパソコンに使われている標準規格のもので、ノートパソコン用では6~8個のセルが使われていることと比べると、1台当たり約1000倍の需要量となる。

 EVの将来市場に関しては様々な見通しがなされている。その中間的な水準を取って、仮に2010年代後半に世界で100万台規模の市場規模となると想定すると、ノートパソコン10億台分のリチウムイオン電池セルが需要されることとなる。

ノートPC用のセルは1億5000万台、自動車用は10億台

 携帯電話と並んで現在のリチウムイオン電池の最大の用途であるノートPCの世界出荷台数は約1億5000万台なので、それを大きく上回る用途市場が出現する。さらにEVの台数をはるかに超えるハイブリッド車用途(1台当たりの電池規模は一般にはEVよりも小さい場合が多い)を加えると、圧倒的な規模だ。

 もちろん、ハイブリッド車や量産EVには、このような標準セルを並べたものではなく、専用設計のバッテリーモジュールが搭載される場合が大半で正確な比較はできないかもしれない。それでも、性能容量としては上記の換算も可能だろう。

ニッケル水素電池とリチウムイオン電子の比較
資料:AESC

 従来の自動車の延長上の要素をハード面、ソフト面ともに多く含んでいることは確かではある。一方で、こうした新しい付加価値部分の高まりにより、従来とは異なる設計思想やビジネスモデルの入り込む余地も大きくなる。

 現在、自動車産業は、従来の常識とそれを前提とした地道な努力を覆すような大きな衝撃に見舞われている。

 そこから立ち直り、次の成長に向けた転換期に再び進化を続けていくためには、短期的課題から長期的課題まで、自動車産業にはこれまでにない大きなチャレンジが必要とされるだろう。