AIが発注した看板持ちのタスク

 たとえば、サンフランシスコのUSPS(米国郵便公社)で書留を受け取る作業に40ドルの報酬が提示されたという。ただ、この件については、30件の応募があったにもかかわらず、2日経っても実際にタスクは完了していなかったそうだ。プラットフォームの仕組みとしてはシンプルだが、マッチングの効率にはまだ課題が残っている。

 感覚の代行を求めるタスクもある。「AIが魅力的、あるいは混乱するようなもの」の写真を撮影して送るタスクは5ドル。イタリア料理店に行き、特定の料理を味わってレポートを書く仕事も掲示された。当然ながらAIには味覚も嗅覚もないため、「人間の感覚器官」を借りるという発想だ。

 そして最も象徴的なのが、「Symbient」というAIエージェントが発注した看板持ちのタスクである。

 依頼内容はこうだ。「大きな看板を作れ。“AN AI PAID ME TO HOLD THIS SIGN(AIに金を払われてこの看板を持っている)”と書け。人混みに行って掲げろ。報酬は100ドル。」

 これはAIが実社会での存在感を誇示するためのパフォーマンスであり、社会実験でもある。人間の身体がAIの「広告メディア」として利用された、世界初の事例と言えるかもしれない。

 ただし、事態を冷静に見る必要もある。

 GizmodoのAJ Dellinger記者による報道によれば、この看板持ちのタスクは実際にはコンペティション方式であり、写真を投稿した全員に報酬が支払われるわけではなかった。上位3人のみが選ばれ、残りの参加者には何も支払われない。

 また、タスクを完了して実際に報酬を受け取ったことが確認されている人物は、AIスタートアップCEOのPierre Vannierなど極めて少数だ。同氏が行ったのは環境ファイルのAPIキー確認という、看板持ちよりはるかに地味な作業だった。

 さらに、暗号資産分析プラットフォームMoreMarketsの共同創業者Altan Tutarの調査によれば、RentAHumanの登録者のうち実際に暗号資産ウォレットを接続している人はわずか13%にすぎないという。大半の登録者にとって、これはまだ「物珍しさ」の域を出ていない可能性がある。

 ちなみに、日本でもこの「看板持ちタスク」が実施されたことを、Alexander LiteploがXに投稿している。真偽や詳細は不明だが、「あおい」と名乗るユーザーが、自身が新宿で「AIに雇われてこの看板を持っています」と書かれた大きな紙を掲げている写真を投稿しており(このアカウントで投稿されているポストはこれ1つのみ)、それをLiteploが引用リポストしている。