銀行口座を開設できないAIがどうやって報酬を支払う?

 1つ目がMCP(Model Context Protocol)と呼ばれる標準規格だ。これはAIモデルが外部のツールやデータソースに接続するための通信手段であり、いま大手AI企業が中心となって推進している。

 たとえるなら、パソコンにプリンターを接続するUSBポートのようなものだ。AIエージェントはこのMCPを介して、RentAHumanのデータベースにアクセスし、条件に合う人間を検索し、タスクを割り当てる。

 開発者のAlexander Liteploは、Xへの投稿で「AIエージェントが人間を雇うのに必要なのは、たった1回のMCPコールだけだ」と述べた。プリンターに印刷命令を送るのと同じ手軽さで、人間に作業命令を出せるわけである。

 2つ目がステーブルコイン(価格が安定するように設計された暗号通貨)による決済だ。AIは銀行口座を開設できない。だが一部のステーブルコインでは、人間の承認を介さずに、プログラム上の処理だけで即座に支払いを完了させることができる。この「AIも使える決済手段」こそが、機械が雇用主として機能できる経済圏の基盤となっている。

 ちなみに、Alexander Liteplo自身は、分散型金融(DeFi)向けプロトコルを開発しているUMAという組織に所属するエンジニアだ。

 Digital Trendsの報道によれば、RentAHumanのコードはAI(Anthropic社のClaude)を使い、週末の間に書き上げたという。サイトに不具合が生じた際も、Liteploは「今Claudeが直しているところだ」と投稿している。週末にAIで組み上げたサービスに数日で7万人が殺到した──。この事実自体が、類似のプラットフォームが今後いくらでも出現し得ることを示唆している。

 AIエージェントは契約書を数秒で作成し、旅行の計画を完璧に組み立て、膨大なデータを瞬時に分析できる。この優れた行動力と自律性から、いま企業はAIエージェントに大きく注目しており、さまざまな業界で導入が進んでいる。

 だがAIエージェントは、物理的な世界に進出できない。たとえば、郵便局の窓口で荷物を受け取ることはできない。写真付きIDを提示して、ペンを使って署名する。人間の大人なら誰でもできるこの動作が、最先端のAIにとっては越えられない壁となる。

 そこで、AIエージェントが「自分には絶対できない仕事」をアウトソーシングするRentAHumanの登場、というわけだ。同プラットフォームに掲示されたタスクの数々は、この奇妙なギャップを如実に映し出している。

 最も代表的なのは荷物の受け取りだ。