「絶対にメダルを獲ろう」
団体男子フリーの得点を確認し、顔を覆う佐藤駿(中央)の肩をたたく鍵山優真(同右)ら 写真/共同通信社
北京ももちろん、表彰台を目標にしていた。ただ、これまでメダルを獲得したことはなく、今思えば、坂本らの言うように明確に描いた目標ではなかった。そこでメダルを現実のものとして、意識は変わった。
男子ショートプログラムで1位となった鍵山の言葉も裏付ける。
「今回はみんなが絶対にメダルを獲ろうと強い意志を持って挑んでいました」
目標をはっきりと定め、そしてそれを実現すべく選手たちは重圧にのまれることなく、好パフォーマンスを発揮し続けた。そこに大きな価値があり、だから最後の最後までアメリカと名勝負を繰り広げることができた。
そのパフォーマンスを支えたのはチームとしての一体感だ。自分の出番の兼ね合いで難しい場合を除き、許す限りの時間、チームメイトの応援に力を注ぎ、笑顔で出迎え、好演技には涙を流した。
そういえば、自分がよい演技と高得点を出しても喜びを控えめに示す程度の佐藤が、鍵山の演技に対しては思い切り喜びを表していた。自身のときとはかけ離れていた。それもチームへの思いを表す一場面であった。
それを象徴するのは、時折選手たちの言葉の中に聞かれた「バトン」だ。駅伝のように、次の選手へよい形で渡そう、それを引き継いで、さらによい形で次へつなごう。そんな意識にあふれていた。チームとしてのまとまりは、選手が演技に向かう際の大きな力ともなった。
そしてバトンの引き継ぎは終わらない。
これから始まるそれぞれの個人戦へとつながっていき、一つ個人戦が終われば、次の個人戦へと引き継がれていくはずだ。
今大会に限らない。北京オリンピックの経験がミラノ・コルティナオリンピックへとつながっているように、次のオリンピックにも引き継がれていくことになる。
初めてオリンピックに出場した佐藤、吉田や森田の胸にもしっかり刻まれたであろう。
大きな余韻を残した団体戦は終わった。
自身の種目へ向かう選手たちは、団体戦で得た糧を武器とし、さらなる高みを目指し、挑む。
*JBpressでの連載「フィギュアスケートを支える人々」(2024年8月30日公開までの一部)と、書き下ろしを含む電子書籍『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』(松原孝臣著/日本ビジネスプレス刊)が発売中。青木祐奈のコーチ、中庭健介のインタビューも掲載しています。
『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』著者:松原孝臣
出版社:日本ビジネスプレス(SYNCHRONOUS BOOKS)
定価:1650円(税込)
発売日:2026年1月20日
冬季オリンピックが開催されるたびに、日本でも花形競技の一つとして存在感を高めてきたフィギュアスケート。日本人が世界のトップで戦うのが当たり前になっている現在、そこに至るまでには、長い年月にわたる、多くの人々の努力があった——。
日本人がフィギュアスケート競技で初めて出場した1932年レークプラシッド大会から2022年北京大会までを振り返るとともに、選手たちを支えたプロフェッショナルへの取材を掲載。
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