アマゾンはAIロボットも開発している(写真はサンフランシスコの同社AIロボティクス研究所前で2024年8月20日撮影、写真:AP/アフロ)
2026年1月初旬、米アマゾン・ドット・コムが提供を開始した「Alexa.com(アレクサ・ドット・コム)」は、同社のAI戦略における重要な転換点となった。
これまで「Echo(エコー)」などのスマートスピーカーを通じた「音声」主体のインターフェースに限定されていたアシスタントサービスが、ウエブブラウザーへとその提供範囲を拡大した。
これにより、先行提供(アーリーアクセス)の対象ユーザーは、パソコンのブラウザー上で「Alexa+(アレクサプラス)」と対話が可能になった。
音声に加え、キーボードによるテキスト入力やブラウザーならではの豊富な視覚情報を組み合わせた「マルチモーダル(多様な入力形態)」が実現した格好だ。
利用できる機能はテキストによる情報検索にとどまらない。
予定の管理やスマートホーム操作、Amazonフレッシュ(生鮮食料品配送サービス)での注文といったタスクをブラウザー上で完結できる。
同社はこれを「エージェント主導のデザイン(agent-forward design)」と定義している。AIの役割を単なる応答から、複雑なプロセスを実行する「代行」へとシフトさせる狙いがある。
戦略の背景:インフラ競争と「リーダーのジレンマ」への対応
アマゾンがブラウザー展開を急いだ背景には、米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」や米グーグルの「Gemini(ジェミニ)」への対抗意識がある。
これらの競合はブラウザーを介して強固なユーザー接点を築き上げている。
アマゾンは2025年、自社のEコマース基盤を外部のショッピングエージェントに開放するか否かという「リーダーのジレンマ」に直面してきた。
当初は競合ボットを遮断する姿勢を見せていたが、最終的にはアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)の主導下で方針を転換した。
現在は、外部エージェントとの「共存」と自社エージェントの「高度化」を並行して進める戦略を取っている。
技術的側面では、2025年末に実用化した自社製AIチップ「Trainium3(トレーニアム3)」による演算コストの低減や、ハルシネーション(幻覚)を抑制する「ニューロシンボリックAI」の導入が、この新サービスを支えている。
家庭内の煩雑な事務作業(ライフ・アドミン)をAIに代替させる上で不可欠な、処理能力と信頼性の向上が図られた形だ。
アレクサ・ドット・コムの提供は、これら一連のインフラ投資が、消費者向けの具体的サービスとして形となったものといえる。