中長期では「侵攻準備」と読むべき理由も

 今回の粛清を短期的な軍の「弱体化」としてのみ評価すれば、事態の本質を取り逃がす。

 スターリンはトハチェフスキーを失いながらも、ゲオルギー・ジューコフら若手の英才を抜擢し、軍を再建し、最終的には独ソ戦で勝利を収めた。

 この「粛清→弱体化→再編→強化」という歴史的プロセスは、今回の中国軍に対する粛清を読み解く上でも極めて重要な比較軸となる。

 習近平国家主席は、軍の統制を自らの「政治的生命線」と位置づけてきた。これは、まさに「銃口から政権が生まれた」中国共産党ならではの発想である。

 軍の選挙規定にまで「習近平思想」を明記したのは、軍内部の意思決定を完全に掌握するための制度的布石だ。

 これは、戦時体制への移行期にしばしば見られる「軍を政治権力の完全な統制下に置く」動きの典型である。

2027年という時間軸:習近平の「節目」

 ここで重要なのが、2027年という時間軸である。

・習近平氏の任期最終年
・人民解放軍創設100周年
・軍近代化計画の達成期限

 政治・軍事の節目が重なるこの年は、習近平氏にとって「歴史的成果」を示す絶好のタイミングだ。

 したがって、2024〜2025年に軍を一度「壊す」のは、むしろ合理的である。

・2024〜25年:粛清と派閥解体
・2026年:忠誠度の高い新指導部で再編
・2027年:軍の統制と近代化が完成

 この時間軸は、スターリンが粛清後に軍を再建したプロセスと驚くほど似ている。

台湾情勢の「本当の危険期」はいつか

 今回の粛清は、「今すぐ侵攻が近い」というシグナルではない。むしろ、2026〜2027年こそが最も危険な時間帯である。

 軍の統制が最も強固になり、装備体系が整い、習近平氏の政治的節目が重なる。

 このタイミングで、習近平氏は「歴史的使命」としての台湾統一を強く意識する可能性がある。

 逆に言えば、2024〜2025年は「嵐の前の静けさ」であり、軍内部の再編が進んだ期間と見るべきだ。