量産で先行する中国勢、国家戦略が後押し
テスラが技術の完成度を模索する一方で、中国企業は圧倒的なスピード感で社会実装を進めている。
中国政府は「第15次5カ年計画」において、「身体性人工知能(Embodied AI)」を重要項目に掲げた。
これは、人口減少と高齢化に伴う労働力不足という深刻な課題を、ロボット技術で解決しようとする国家的な試みでもある。
中国国内には既に150社を超える人型ロボット企業が存在する。主要な動きは以下の通りだ。
●宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス):2025年5月に1万6000ドル(約250万円)の低価格モデル「G1」を発売した。現在は企業価値70億ドル(約1兆1000億円)規模の新規株式公開(IPO)を視野に入れる
●優必選科技(UBテック・ロボティクス):2026年に5000台、2027年に1万台という具体的な増産計画を推進中
●智元創新科技(アジボット):2025年末までに累計5000台の出荷を達成した
中国勢の強みは、EV産業で培った厚みのあるサプライチェーンにある。
UBテック・ロボティクスは生産コストを毎年20~30%削減できると見込む。米国の競合他社に対し、強力な価格競争力を発揮しつつある。
米中戦略の違いと共通の課題
米中両国の戦略には明確な対比が見られる。
米企業はAIアルゴリズムや垂直統合(部品からソフトまで自社管理)に強みを持つ。システムの安全性と知的財産の確保を優先する傾向が強い。
対して中国は、政府の補助金と強力な製造エコシステムを武器にする。まずは現場への大量導入を優先する「数」の戦略を採る。
しかし、2026年現在、両国に共通する課題も浮き彫りになっている。
第1にAIの限界である。不確定要素の多い屋内環境での自律移動や、繊細な家事をこなすまでにはまだ時間を要する。
第2にコスト削減だ。試作機のコストは現在15万~50万ドル(約2350万~7840万円)に達する。
普及には、人間の労働力と代替可能な2万~5万ドル(約310万~780万円)まで引き下げなければならない。
さらに投資バブルの懸念も拭えない。中国の国家発展改革委員会(NDRC)は、市場の過熱感に警鐘を鳴らしている。
デモ映像と実際の産業現場でのパフォーマンスの乖離(かいり)は、バブル崩壊のリスクをはらんでいる。