いじめっ子は歯向かわれると引く
欧州の指導者はまだ、トランプと真っ向から対峙することをためらう。
米国が担っている安全保障上の役割は、米国が欧州に与えられる苦痛がその逆よりも常に大きいことを意味すると恐れているからだ。
だが、過去1年間で得られた証拠は、トランプの圧力を前に屈服することは、反撃するよりも危険だということを示している。
中国やブラジルなど、ホワイトハウスに向かって立ち上がる国があると、トランプは通常、手を引くことになった。典型的ないじめっ子のやり方で、米国大統領は弱い者に屈辱を与えるのを好む。
だが、フェアな戦いのように見えるものからは大抵、さっさと手を引く。
人口が少ないデンマーク自治領のために大西洋同盟をリスクにさらす価値はないと言いたい衝動に駆られる欧州の指導者がいたとしたら、考え直す必要がある。
グリーンランドの行方に左右される問題は領土の一体性と自決権であり、それは国際法と欧州統合プロジェクトの根幹をなす原則だ。
こうした原則を捨て去ると、EUと国際秩序、そして大西洋同盟の名残に甚大な被害を与える。
中国やロシアも行方を注視
ヨーロッパ人は、これがどのように展開していくか全世界が見守っていること、そしてトランプが新たに築こうと躍起になっている過酷な世界秩序のなかで生き延びるEUの能力について何らかの結論を引き出すことも意識するべきだ。
筆者はこの1週間で、国家主義の中国の友人から得意げなメッセージを数件受け取った。この友人は嬉々として欧州が屈辱を味わうことを期待していた。
グリーンランド問題で譲歩すれば、欧州は我々が今、取り返しのつかない形で「力こそ正義なり」の世界に入ったことを裏付けることになる。中国にとっては心をそそられる展望だろう。
ロシア人も現在の危機の行方を熱心に見守り、ヨーロッパ人の決意と強さについて結論を引き出すだろう。
もしクレムリンが欧州は弱く、好きに手を出せる領土だと判断すれば、大陸全体が代償を払うことになりかねない。
欧州自身のために、そして世界全体のために、欧州はグリーンランドについて毅然とした態度を貫かなければならない。
(文中敬称略)