本当の中道かどうかは政治的実践で決まる

 時速50キロ制限の一般道で時速80キロを出すと、危険極まりない。暴走行為を繰り返せば、いずれ大事故を起こしてしまう。では、時速50キロ制限の道を時速20キロで走ればいつでも停止できるから安全ということでもない。今度は後方から追突されかねない。

 道の真ん中を走り続けたり、いかなる状況でも制限速度で走り続けたり、ということも極端な運転になってしまい事故を引き起こしてしまう。大雨で前も見えない状態や交通量が増えてきた場合は、制限速度以下にスピードを緩めることが必要になってくる上に、道路に危険物が落ちていれば、場合によっては車線を越えて避けることも必要になる。

 また、運転中、隣に座っている人と喧嘩をしたり、休憩も取らずに何時間も走り続けたりしても、判断を誤り、事故を引き起こす元になる。

 運転で大切なのは、正しい状況を適切に把握し、安全のために臨機応変に対処しながら運転するということ。しかも、車の運転は、「その日だけ安全運転すればいい」ということでもない。習慣として安全運転を心がけなければ、いずれ事故を起こし、取り返しのつかないことになりかねない。

「中道」の教えとは、バランスの取れた立場で、客観的に状況を把握し、何が適正かを判断し、正しい日々を送るということになる。このバランス感覚を身につけるには、常に八正道を実践し、習慣にしていく必要があるというのだ。

「中道」という言葉は、右でも左でもない穏健性を想起させ、有権者の警戒心を下げる効果があるかもしれない。しかし、それは真の「中道」の考え方とはいえない。

 新党「中道改革連合」が、仏教語の「借用」にとどまるのか。それとも二つの極端を離れる具体的政策として示せるのか。衆院選とその後の政策形成を通じた政治的実践で本当の「中道」かどうかが決まる。

鵜飼秀徳(うかい・ひでのり)
作家・正覚寺住職・大正大学招聘教授
1974年、京都市嵯峨の正覚寺に生まれる。新聞記者・雑誌編集者を経て2018年1月に独立。現在、正覚寺住職を務める傍ら、「宗教と社会」をテーマに取材、執筆を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』『仏教の大東亜戦争』(いずれも文春新書)、『ビジネスに活かす教養としての仏教』(PHP研究所)、『絶滅する「墓」 日本の知られざる弔い』(NHK出版新書)、『ニッポン珍供養』(集英社インターナショナル)など多数。大正大学招聘教授、東京農業大学非常勤講師、佛教大学非常勤講師、一般社団法人「良いお寺研究会」代表理事。公益財団法人日本宗教連盟、公益財団法人全日本仏教会などで有識者委員を務める。