9月3日、中国人民抗日戦争・世界反フアシズム戦争勝利80周年記念大会で重要演説を行った習近平主席(写真:新華社/共同通信イメージズ)
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 台湾有事に関する高市発言以来、日中関係の緊張が続いている。今のところ、出口が見えない状態である。そのような中で、アメリカ国防総省は、2027年末までに、中国は台湾を武力統一する軍事力を持ち、それに成功すると警告した。そのような事態になるのか。習近平主席の思想と行動について、演説などを引用しながら、詳しく見ていく。

中国「屈辱の近代史」

 2012年11月15日に中国トップの座に就いた習近平は、ナショナリズムを高揚させ、中華民族の栄光を再興することを第一のスローガンに掲げた。「中華民族の偉大な復興」という言葉は、今に至るまで、習近平の重要演説のほとんど全てに登場する。

 典型的な演説を、以下に引用する。政権就任直後の演説である。

 習近平は、2012年11月29日、李克強、王岐山らと共に、北京の国家博物館で開催中の「復興の道」展示会を見学した。この展示会は、中国人が民族復興のために歩んできた道程を振り返るものである。以下は、その際に行ったスピーチの一部である。

<近代以降、中華民族は苦難の連続で、多くの犠牲を払ってきた。……改革開放以来、われわれは歴史的経験を総括し、絶えず粘り強く模索を重ね、ついに中華民族の偉大なる復興の実現に至る正しい道を探り当て、世界の注目を集める成果を挙げた。この道のりこそが、中国の特色ある社会主義にほかならない。

……アヘン戦争以来、170余年の奮闘を続け、中華民族の偉大な復興は、明るい未来を見せている。現在、われわれは歴史上のどの時期よりも、中華民族の偉大な復興の目標に近づいている。歴史上のどの時代よりも、この目標を実現させる自信と能力を持っている。

 すべての人が追い求めるものを持っており、みな自らの夢を持っている。現在、みなが中国の夢について語っているが、私は中華民族の偉大な復興を実現することこそが、中華民族が近代以来抱き続けてきた最も偉大な夢であると思う。

……一人一人の前途・運命はすべて国と民族の前途・運命と密接につながっている。国と民族が繁栄してこそ、人民一人一人の未来は明るくなるのである。中華民族の偉大な復興の実現という栄えある、しかし困難極まる事業を成し遂げるには、幾世代にもわたる中国人が共に努力していく必要がある。

……中国共産党創立100周年を迎えるまでに小康社会を全面的に達成するという目標と、新中国成立100周年を迎えるまでに富強・民主・文明・調和の社会主義現代国家を築き上げるという目標を必ず達成することができ、中華民族の偉大な復興の夢は必ずかなえられるということを、私は固く信じている>

 この演説で、習近平は、「アヘン戦争」に触れ、170余年の「奮闘」の歴史を回顧している。そして、改革開放政策の実行以来、目覚ましい発展を遂げたことを誇るのである。

 この演説から2025年末までに13年の年月が経過したが、年率5%以上の経済成長を続け、先端技術の開発で世界をリードし、軍事力も拡大し、人民元の国際通貨化も進んだ。習近平は、着実に「中国の夢」を実現してきている。その意味では、この現代の皇帝は公約を果たしているのである。