習近平体制の統制の本質
安田:10年以上前の中国では、日中関係が悪化するたびに街頭で反日デモが起き、企業が襲われる事件もありました。当時は数年に一度の恒例行事のような面がありました。しかし習近平体制になって以降、その手の混乱はほとんど見受けられません。
これは、習近平氏が大衆動員的な運動を好まないことと、政権が社会を強く統制しているためでしょう。今回も大規模な反日デモは見られません。過去の胡錦涛政権時代のように、他の常務委員や地方政府が平気で中央の意向を無視してグリップできていない状況とは違います。これは、各部門が忖度合戦に陥って硬化する現象と表裏一体でもありますが。
劉:現状、日本人アーティストのコンサートが中止になったり、様々な学術・文化交流が停止になったりしていますが、そのうち中国側が飽きてくると徐々に再開されるようになるでしょう。こちらから接触や対話は続けて、向こうの態度が変わる兆しをうまく捉えることが重要だと思いますね。
台湾を議論する上で大切な日本の姿勢
安田:最後に伺いたいのですが、日本は台湾問題にどういう姿勢で臨むべきでしょうか。
劉:今回の騒動を見ても、日本の多くの人が自分の好みの情報源だけで台湾像を形成していると感じました。私はこれを「日本の政治対立軸に基づいた台湾認識」だと定義しています。
右派や保守層は、台湾が日本の植民地時代を比較的肯定的に評価する点や、安全保障での重要性を強調して台湾を歴史認識問題の文脈などで利用します。一方、左派・リベラル層は同性婚の法制化やコロナ対策の成功などを根拠に台湾を評価して、自民党政権の批判のために利用します。自分たちの都合の良い部分だけを評価して、都合が悪くなれば台湾を見ない。
しかし台湾には約2300万人が暮らし、中国の脅威を感じながらも自由と民主主義を守ろうと日常を営んでいます。台湾を論じる際は、自分に都合のよい部分だけを見るのではなく、まずは台湾社会の実情や多様な声を理解してほしいと思います。
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