ロシアのプーチン大統領(写真:ZUMA Press/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=60ドルから62ドルの間で推移している。ロシアの地政学リスクが材料視されて62ドル台で始まったが、増産観測により下落し、その後、60ドル前後で推移している。

 まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

原油市場の需給をめぐる動きは?

 ロイターは10月27日「OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の有志8カ国は11月2日に開く会合で、12月の生産目標を日量13万7000バレル拡大することで合意する見込みだ」と報じた。制裁を受けているロシアが増産分の買い手を見つけるのが困難になっているため、11月に続いて小幅な増産となるという。

「増産ペースを加速すべきだ」とする有志8カ国のメンバーもいる。

 クウェートのローミー石油相は23日「(米国のロシア制裁を受けて)OPECは必要なら減産規模を縮小する用意がある」と表明した。ロシア産原油の買い手である中国やインドなどからの引き合いがくることを念頭に増産ペースの加速を求めた発言だ。

 有志8カ国は今年に入り、9月に日量220万バレル分の自主減産を計画よりも1年早く終了した。これとは別に実施している日量166万バレル分の自主減産も10月から規模を縮小し始めており、既に日量約250万バレルの原油を増産した計算になる。

 これにより、原油価格は昨年末に比べて15%ほど低下したが、1バレル=60ドル前後の水準をなんとか維持できている。

 だが、OPECプラスの協調体制が崩れれば、原油価格に下押し圧力がかかる。

 有志8カ国の中で増産の意欲を最も鮮明にしているのがイラクだ。

 イラクのアブドルガニ石油相は27日「同国の来年の生産枠を生産能力に合わせて引き上げるべきだ」と主張した。イラクの生産枠は日量440万バレルだが、アブドルガニ氏は「年末までに生産能力を日量550万バレルに拡張できる」としている。

 イラクの原油生産量は現在、日量360万バレル程度だが、過去の減産分を清算するため、来年の生産量が大幅に引き上げられる可能性がある。

 逆に、イラクの政治情勢が再び不安定化し、原油生産に支障が生じる可能性もある。