世界金融危機への主要国の対処・協力を求めて、昨年(2008年)の11月にワシントンで、そして今月の初めにはロンドンにてG20による協議が行われた。この協議に当たりロシアは、資本移動監視とその規制、世界の金融センター機能の分散、新通貨創造などを提起し、事務レベルでの各国の見解調整段階で論点としていた模様である。
IMFや世銀の大幅改革を提案
より細かく見ると、昨年11月には新たな国際条約締結も視野に入れた世界銀行やIMF(国際通貨基金)等の国際金融機関の大幅な改革や各国及び国際金融基準の整合性を図る中でのリスク制御、金融市場参加者の合理的行動への誘引条件設定・開発、それに世界の金融センターの数を増やし国際金融の基盤の強化を図ることなどを主張した。
今月のG20の準備段階では、これらに世界通貨創設案やBRICsの危機対応での相応の地位確保、それにエネルギー安全保障などが論点に加えられた。
ロシアがこうした問題を提起し、国際経済の中でそれ等の実現を図ろうとした動機や理由には以下が考えられる。
(1)世界経済の現状に対してロシア政府は、まず経済原理のうえで米英型新自由主義の考え方では、これまで噴出してきた諸問題への対処がもはや困難と判断している。換言すれば、世界の金融・経済危機の底はまだ到来していないという見方を保持する。
(2)この判断に加えて、米英のやりたい放題にロシアの対外経済運営が追随を余儀なくされる状況から脱却したいという強い欲求がある。これ以上国際資本の移動に自国の経済を振り回されるのは御免だ、といったところだろう。
(3)さらに、米英型自由主義の支配崩壊で世界経済の多極化が進行するならば、ロシア自らがその新たな時代での世界経済の主要プレーヤーとなる条件をその中に築いておくことを狙う。