2008年10月から大幅な下降が表に出始めたロシア経済は、2009年1月のGDP成長率が年率換算で8.8%の減少を記録し、主要国では日本に次ぐ成績の悪さを示した。
他方で、2月の数値はまだ出揃っていないものの、一時は強く懸念された通貨ルーブルの際限無き切り下げと外貨準備の減少は凪に入り、資本流出も2008年12月のピーク時からは沈静化してきている。
最悪期は脱したロシア経済
鉱工業生産でも1月の16%減少が底であったようであり、どうやら最悪期は過ぎたと言う見方もできる。これに対して、経済危機の第1波は過ぎたかもしれないが、企業の業績悪化が銀行の不良債権増加と収益悪化を深め、危機の第2波がこれからやって来るという説もある。
ロシア経済はいつ回復するのだろうか?
筆者の結論を述べれば、本年後半からは意外に早く各指標でのマイナス圏からの脱出が可能ではないだろうか。その理由として、原油価格は上がらないまでも、もう下がらないとの認識が広まり始めた点が挙げられる。そうなれば、ロシア企業やロシア国民の少なくとも4分の1には景気底打ち感が形成され、2009年後半にも各指標が前年比プラスに転じるだろう。
ただし、2008年前半までの5%を超える成長に戻るには、世界経済全体の復調や原油価格の動向次第で、少なくとも今後2~3年は必要だろう。水面上に経済が顔を出しても、当分は低空水平飛行が続くと言うことになる。
今回の危機がどのような形でロシア経済を襲ったかを振り返ると、2008年初めから既に不動産バブルが弾ける兆候が出始めていた。この理由は、不動産価格があまりに高騰して買い手がつかなくなってきたことで、過熱した経済のインフレがその経済自体を麻痺させ始めていたことが理由と言える。
自分の足元にサブプライム問題で火がつき、このインフレの危険性を察知したことが主な理由で、外資が5月からロシアの株式市場を離れ始めた。そして、7月に鉄鋼や非鉄金属の国際価格と需要が減少し始め、これに原油の国際価格が追随し始める。
最後は8月半ばから顕在化した金融機関からの外資(融資)引き上げで、これが9月のリーマン・ショックで一気に拡大した。実体経済の揺らぎのうえに金融の機能不全と疑心暗鬼がのしかかったわけである。
この危機に至った過程が逆回転すれば、危機から回復できるだろうか。
生産の半分を輸出する鉄鋼と、同じく6~9割を輸出に回す非鉄金属の場合は、海外需要の下げ止まりが回復のカギとなる。金属原料と製品の価格はその需要動向におおむね支配されるから、海外需要の減少が止まれば価格も低位とはいえ安定するものと思われる。
鉄鋼は最盛期の70%ほどの生産に戻る可能性
それが一時的なものかどうかで議論があるが、鉄鋼は1~2月には多少持ち直してきたようだ。国内での財政からのインフラ建設向け資金投入がこれに加われば、最盛期の70%ほどの生産に戻る可能性はある。
では石油やガスはどうなのか?