ロシアは毎年、国内で3つの大きな経済フォーラムを行っている。その中でも大統領自らが参加し規模も最大になるのがサンクトペテルブルクでのフォーラムだ。今年は6月4~6日に開催された。

 今回のフォーラムには、ちょっとした異変があった。ロシアへの投資呼び込みを念頭に置いて企画されていたこれまでのフォーラムと異なり、第13回目となる今回は主題がロシア経済から世界経済にシフトしていたのだ。

ダボス会議に比肩する会議を目指す

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2009年のダボス会議でコーヒーを受け取る出席者〔AFPBB News

 皮肉な見方をすれば、ロシア経済に誇示宣伝する材料がなくなったための苦肉の策と言えるが、このフォーラムの地位をダボス会議に比肩するような世界的なものにしたいというロシアの、特にメドベージェフ大統領の強い意向が反映されているとも考えられる。

 このことは、主要なパネルディスカッションの司会を、従来のロシア政府高官ではなく米国メディアの人気キャスターや米主要紙のコラムニストに任せたことからも見て取れる。

 フォーラム冒頭に行われたメドベージェフ大統領の演説では、大まかに言って2つのポイントがあった。1つは国際経済の仕組みの改革について。もう1つがロシア経済の状況とこれからの展望についてだった。

 国際経済の仕組み改革は現在、ロシアが西側諸国に向かって最も主張したい点である。メドベージェフ大統領は冒頭で「現在の国際機関では危機に十分対処できないのではないかと、昨年のフォーラムで表明した懸念は不幸にして当たってしまった」と述べた。危機の規模と深刻さを強調するとともに、世界経済は既に底を打ったとの一部の見方にはおよそ賛同できないと切り捨てた。

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新しい国際経済の枠組みが必要だと主張するロシアのメドベージェフ大統領〔AFPBB News

 この危機には新たな国際協力の枠組みと発展のモデルがなければ対処できないとし、G20で交わされている議論を引きつつ、金融機関の振る舞いに基準を設け、国際金融機関をこれまでとは異なった機能を持つ形に変えていくべきだと強調する。

 国際資本移動を今のような野放しの状態から一定の枠をはめた形に持っていこうという考え方であり、ロシアは自らの立場から主張すると同時に、既に4月のこのコラムでも触れたように、米国に対してその主張を強める欧州の戦列に加わらざるを得ないという側面もある。

 この大統領に轡(くつわ)を揃えて、市場経済派のナビウリナ経済発展相は個別のセッションで1世紀に1度の大変革を目指すべきと主張し、同じくクドリン蔵相は今のIMFに代わる新たな国際金融の “Regulator” が必要だと述べた。さらに同蔵相は今後の国際通貨体制の変化にも触れ、その中で10年後には中国の元が基軸通貨の1つになっているだろうとしている。