家計の資金は株式市場にも流れ込んでいる(写真:共同通信社)
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
円の現預金はついに50%割れ目前に
10月のドル/円相場は高市政権発足とともに150円台に復帰し、値固めに入りそうな雰囲気も感じられる。相変わらずリフレ政策への期待は根強く、今後もリスク資産を中心として価格が押し上げられそうである。
この点、日銀から公表されている2025年6月末時点の資金循環統計(速報)は興味深い内容であった。今回は、「解放の日」以降で初となる家計部門の金融資産構成の状況である。
既報の通り、家計の金融資産残高は2239兆円と過去最高を更新した(図表①)。四半世紀前(2000年6月末)と比較すると、金融資産自体は約+838兆円増加しており、これを円貨性資産と外貨性資産で分けてみると、前者が約+740.1兆円、後者が約+96.9兆円と、この四半世紀の伸びは圧倒的に前者でけん引されたことが分かる。
【図表①】

もっとも、総資産全体に占める構成比で見れば、外貨性資産(筆者試算)は1.0%から5.0%へ5倍以上に上昇する一方、円貨性資産は99.0%から95.0%へ▲4.0%ポイント低下している。外貨性資産の構成比が5%台に乗ったのは初めてである。
なお、統計作成上、外貨建て生命保険が含まれている円貨性資産の保険・年金・定型保証は約566.1兆円と全体の25%を占めている。この5%部分でも外貨だとすれば、外貨性資産比率は6%を超え、10%部分と仮定すれば7.5%まで上昇する。それを踏まえれば、「日本の家計金融資産の10%程度は外貨」というイメージを持っておきたいところだ。
外貨建て資産の増勢は、主に投資信託にけん引されたものだ。過去四半世紀で約6.2兆円から約63.8兆円へ金額で10倍に膨らみ、全体に占める構成比では0.4%から2.8%へ4倍に増えた。新NISAの稼働と、「オルカン」に象徴される世界株式に低コストで投資できるエントリー商品が家計部門の現預金を引きつけたのは間違いない。
取引コストの低下によって増えたのは対外証券投資も同様だ。過去四半世紀において、外貨建ての対外証券投資は5.0兆円から40.5兆円と金額にして8倍、全体に占める構成比で0.4%から2.8%へ4倍に膨らんでいる。