エジプトで開かれた中東和平サミットに出席したトランプ米大統領(写真:AP/アフロ)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=57ドルから60ドルの間で推移している。供給過剰見通しや米中対立激化の懸念、中東情勢の緊張緩和から、価格のレンジは先週に比べ約3ドル低下している。
まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
石油輸出国機構(OPEC)は10月13日に発表した月報で「OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成する)の9月の原油生産量は前月比63万バレル増の日量4305万バレルだった」と発表した。
OPECの生産量は前月比52.4万バレル増の日量2844万バレルだった。サウジアラビアが日量24.8万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)は同10万バレル増産した。ロシアは前月比14.8万バレル増の日量932.1万バレルだった。カザフスタンは前月比2.6万バレル減の日量184万バレルだったが、生産目標(日量155万バレル)を上回る状態が続いている。
OPECは世界の原油需要について、今年は日量130万バレル増、来年は同140万バレル増と予測し、いずれも前月の数字を変更しなかった。
OPECが「世界の原油市場の需給は均衡している」との見方を維持しているのに対し、国際エネルギー機関(IEA)はまったく異なる。
IEAは14日に発表した月報で「世界の原油市場は来年、日量400万バレル以上の過去最大規模の供給過剰となる」との見解を示した。OPECプラスの増産とともに、非加盟国の来年の増産見通しが強まっているため、供給過剰の規模を前月(日量330万バレル)から約18%上方修正した。
世界の原油市場は既に日量190万バレルの供給過剰となっているが、その大半を中国が備蓄用として買い入れたため、原油価格への影響は抑えられてきた。だが、海上輸送中のタンカーに余剰分が積み上がり始めており、今後、世界の原油在庫は急増する可能性が高いとIEAは指摘している。
OPECの強気予想は世界の原油在庫が低水準であることが根拠だ。だが、この前提が崩れれば、IEAの見立てに軍配が上がることになる。