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 協調性を重んじる日本の教育は「個性が育ちにくい」とも言われる。そんな中でいま、教育界で注目されているのが「探究型」教育だ。自ら問いを立て、考え、行動する力を育むこの教育手法を、保育の現場に取り入れているのが「エデュリー」である。

 創設者の菊地翔豊は、その実践を「探究型保育」と名付け、確かな成果を上げてきた。話題の新刊『2050年の保育 子どもの主体性を育てる実践的アプローチ』から、海外と日本の幼児教育を比較しながら、子どもの主体性を育むための必須ポイントを紹介する。

子どもたちの主体性を育てる3つの共通点  

 最初に、「探究型保育」における重要なポイントをまとめておきたいと思います。

 わかりやすいように、海外の先進的幼児教育の共通点を軸に記します。

共通点1 子ども興味関心が起点である  

 例えば、イタリア発の先進的な幼児教育アプローチである「レッジョ・エミリア・アプローチ」や「プロジェクト型保育」は子どもの興味関心を起点にカリキュラムが展開しています。

  「レッジョ・エミリア・アプローチ」では子どもを「無限の可能性を持つ存在」として捉え、教師は子どもの言動に耳を傾けながら柔軟に活動を組み立てます。

  環境設定も子どもの興味に合わせて意図的に準備され、子どもは興味を引く素材に働きかける中でさまざまなスキルを身につけていきます。

 共通点2 学びのプロセスを共有する

  「レッジョ・エミリア・アプローチ」や「プロジェクト型保育」はドキュメンテーション(学びの記録)を重視しています。

 子どもの作品や写真、会話の記録を壁に展示し、学びのプロセスを共有する実践は「レッジョ・エミリア・アプローチ」では日常的であり、「プロジェクト型保育」でも調査の過程や結果を誰もが見える形にまとめます。

 共通点3 子ども同士の協働と対話を重視する

 さらに、子ども同士の協働と対話を促すところにも共通点があります。

  「プロジェクト型保育」では、子どもたちが一緒にテーマを調べたり問題解決したりする中で協働やチームで行う共同の意識を育みます。

 この後に紹介する私たちの「コーナー保育」では、子ども同士が「これやってみよう」「こうしたらどうなるかな?」と対話しながら遊びを発展させていますが、同じ目的を持っています。

 海外の先進幼児教育との共通点はこれからの保育に不可欠なポイントと言えます。