株式市場は高市早苗総裁の誕生で大幅高となったか…(写真:共同通信社)
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9月に金の記事(「金相場はどこまで上がるのか?ゴールドマン・サックスは5000ドル接近シナリオも」9月11日公開)を書いた時、国際相場はニューヨーク先物市場の中心限月(12月物)で1トロイオンス(約31.1グラム)3600ドルを超えたところだった。そこから、わずか1カ月で金相場は一時4000ドルを超えた。この急騰は何を意味するのか。


(志田 富雄:経済コラムニスト)

ゴールドマンサックスの予想をはるかに上回る急騰

 急騰の背景として指摘されるのは米ドルへの信認低下だが、金価格を押し上げる構図はドルだけではない。日本では高市早苗氏が自民党総裁に就任し、為替市場や株式市場で「高市トレード」が巻き起こった。その円安が国内の円建て金価格の上昇を加速させたのである。10日には公明党が連立離脱の方針を示したことで高市トレードはいったん小休止する形となったが、円安が増幅する金価格の上昇は手放しで喜べないインフレリスクを示している。

 9月の記事で米国の金融大手ゴールドマン・サックスが公表したリポートを引用した。ゴールドマンはトランプ政権が米連邦準備理事会(FRB)の中立性を損なうことになればインフレが再燃し、株価や長期債相場が下落、準備(基軸)通貨としてのドルの価値を劣化させると指摘。中央銀行だけでなく、民間の投資家が対抗手段として金の保有を増やせば金相場は26年半ばには4000ドルに達すると予測した。

 ところが現実は、26年半ばどころかレポートからわずか1カ月ほどで4000ドルを超えた。ゴールドマンもここまで早い4000ドル到達は想定していなかったはずだ。10月6日には来年12月時点の価格予想を従来の4300ドルから4900ドルに上方修正した。

 同社は今年10月を起点に23%の相場上昇を予測しているわけだが、そのうち新興国の中央銀行による金購入の押し上げ効果が19ポイント、米国の金利引き下げを背景にした金ETF(上場投資信託)市場への資金流入効果が5ポイント程度あると分析している。

 9月以降の相場急騰を牽引したのも金ETF市場への資金流入だ。金の調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が10月7日に公表した9月の集計で、資金流入は裏付けになる現物の量で145.6トン、相場も高騰しているため金額では過去最高の173億ドル(2兆6000億円)強に達した。中でも米ヘッジファンドの買いが急増した。