2025年9月24日、東京・秋葉原で選挙活動を行った自民党総裁選候補の5人(左から小泉進次郎農相、高市早苗前経済安保相、林芳正官房長官、茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安保相/写真:アフロ)
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 石破茂首相の退陣表明を受けた自民党総裁選が9月22日告示された。投開票は10月4日だ。7月の参議院選挙後の「石破おろし政局」で国民不在の政治空白が50日間続き、さらに総裁選で1カ月近くを費やす。3年ごとの正規の総裁選ではない臨時総裁選ながら「党員・党友の声を聞く」としてフルスペック型にしたことも政治空白期間を広げる要因だ。一般世論にシラケムードも漂う今回の自民党総裁選。どうにもパッとしない理由と背景、そして勝敗の行方について、「日刊ゲンダイ」第一編集局長の小塚かおる氏がレポートする。

従来の主張を引っ込めて“変節”した小泉氏と高市氏

「きょうのゲンダイの1面の見出し、まさに『言い得て妙』ですね」

 5人の出馬表明が出揃った告示前の19日、浪人中の自民党元議員からそんな電話があった。

 その見出しとは、〈お笑い自民党総裁選 「解党的出直し」のはずが『挙党一致』をほざくアホらしさ〉というもの。元議員は永田町を離れていることで、より一般に近い感覚になっているのだろう。それほど今回の総裁選は内向き、内輪の論理で展開している。

「日刊ゲンダイ」の紙面

 総裁選には、届け出順に小林鷹之元経済安保相(50)、茂木敏充前幹事長(69)、林芳正官房長官(64)、高市早苗前経済安保相(64)、小泉進次郎農相(44)の5人が立候補した。初日の所見発表演説会を皮切りに、党主催やメディアの討論会、東京、名古屋、大阪での演説会など12日間にわたって選挙戦が繰り広げられる。

 5人は1年前の総裁選で石破氏に敗れた面々だが、記者会見や討論会などでの発言は1年前とはずいぶん異なる。前回と違って5人の政策にあまり違いがなく、政治家としての個性も封印気味だ。

 参院選で大敗した自民党が訴えた「現金給付」には全員が消極的。参院選で民意が求めた消費税減税にも全員が消極的。一方で、すでに与野党が合意しているガソリン税の暫定税率廃止はみな積極的に主張する。

 中でも、世論調査の「ポスト石破」でトップを争い、今回の総裁選で有力候補となっている小泉氏と高市氏は“変節”と言ってもいいほど従来の主張を控えている。

 小泉氏は「選択的夫婦別姓の導入」と「労働者の解雇規制緩和」を早々に引っ込めた。前回の総裁選で当初本命視されていた小泉氏は、討論会などで独自の主張を攻められ、説明に窮する場面があり失速した。その失敗から今回は終始、安全運転に徹し、外交など不得手なジャンルでは手元の資料に目を落として答えている。

小泉進次郎氏(写真:アフロ)

 高市氏は安倍政治を引き継ぐ積極財政路線のタカ派だが、「減税は党内の合意が得られない」として打ち出さず、逆に石破政権が立憲民主党と新たな協議会設置で合意した「給付付き税額控除」を訴える。

高市早苗氏(写真:アフロ)

 石破首相肝いりの「防災庁」についても今回は否定しなかった。批判的だった石破氏におもねるような態度にすら見える。注目された首相就任後の靖国神社の参拝については、「まだ、総裁選に立候補している段階」「適宜、適切に判断しなきゃいけない」として明言を避けた。

写真:アフロ