SNSでフェイクニュースの蔓延が懸念されるなか、メディアの役割が改めて問われています。「ジャニーズ問題」で沈黙を続けた日本のメディア。なぜ、日本のメディアは萎縮してしまうのか。イギリス出身でロイター通信上級特派員のティム・ケリー氏と米国出身で調査報道記者のジェイク・エーデルスタイン氏に、ドイツ出身で長年日本に暮らしてきた著述家のマライ・メントライン氏が話を聞きました。3回シリーズの最終回です。
※JBpressのYouTube番組「マライ・メントラインの世界はどうなる」での対談内容の一部を書き起こしたものです。詳細はYouTubeでご覧ください(収録日:2025年8月29日)
メディアの萎縮、トランプ政権下の米国でも
マライ・メントライン氏(以下:敬称略): 今の日本のメディアをどう見ていますか。
ジェイク・エーデルスタイン氏(Jake Adelstein、以下:敬称略): 日本の「レガシーメディア」はタブーに挑戦せず政府を恐れるあまり、国民の信頼を失う一因となっています。かつて安倍政権時代に、高市早苗総務大臣(当時)が(政治的公平性を欠く放送を繰り返すなど)政府を批判すれば電波停止の可能性があると言及したこともありました。
安倍政権を批判したニュースキャスターもテレビから一気に消えました。政府を批判すると不利につながるとの空気があり、報道が萎縮しています。
日本では週刊文春や東京新聞、TBSなど厳しい報道をするメディアがある一方で、特に朝日新聞や読売新聞が弱気になっており、政府批判の報道を避けています。
マライ:こうした忖度の問題は米国にもありますか。
ジェイク:もちろんあります。トランプ大統領がテレビ局を訴え、多額の和解金で決着する事案も起きています。裁判で戦うよりも和解して、トランプ政権の反感を買わない方が良いと判断しているのでしょう。米国のメディアは今の共和党に支配され、報道の自由が激減しています。