トランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)
関税問題やらウクライナ停戦交渉など、相変わらず世界は、アメリカのトランプ大統領に翻弄されています。国内的には、政府組織をつぶすなどして支出の削減を進める一方で大型減税を進めるなど、大衆受けしそうな政策に力を入れています。
こうした動きを踏まえ、多くの論者がトランプを「ポピュリスト」として論じています。
しかし、本当にトランプはポピュリストなのでしょうか。今回はそのことを考えてみたいと思います。
ポピュリズムはトランプのほんの一部分
ポピュリズムというものは、意外と定義が難しいものです。
「固定的な支持基盤を超えて広く国民に直接訴える政治スタイル」と定義する論者もいれば、「複雑な政治的争点を単純化して、いたずらに民衆の人気取りに終始し、真の政治的解決を回避するもの」と定義する人もいます。後者は一言で言えば大衆迎合ということでしょう。
これらを念頭に置いてトランプの政治スタイルを振り返ってみましょう。インフレで苦しんでいる国民の生活を少しでも楽にするべく、大型減税に踏み切っています。大統領選出馬表明時からずっと、かつて製造業に従事してアメリカ経済の主要な担い手だったにもかかわらず、産業構造の変化により現在は経済的苦境にある白人中低所得層に寄り添おうという政治姿勢が、熱狂的な支持を集めてきました。
こうした点だけを捉えれば、確かにトランプはポピュリストに見えるかも知れません。しかし、私はこうした見方は、トランプの政治スタイルのほんの一部を切り取ってみているに過ぎないと思うのです。
トランプは本当に大衆迎合なのでしょうか。いや、そうではありません。むしろトランプは、自らの信念を大衆にぶつけるスタイルで、大統領になった人物なのです。