ホワイトハウスで開かれた「米国へ投資を」イベントでトランプ大統領と握手するNVIDIAのジェンスン・フアンCEO(4月30日、写真:ロイター/アフロ)
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 8月中旬、トランプ米政権が打ち出した新たな対中半導体政策が、ワシントンとシリコンバレーに大きな衝撃を与えた。

 米半導体大手のエヌビディア(NVIDIA)とアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)に対し、特定のAIチップの対中輸出を許可する見返りとして、その売上高の15%を米政府に納付させるという前代未聞の取り決めだ。

 安全保障上の懸念を事実上、金銭で取引するこの「15%ディール」は、米国の輸出管理政策の大きな転換点となる可能性を秘めると同時に、法的な正当性や国家安全保障上のリスクを巡り、激しい議論を巻き起こしている。

異例の「上納金」合意、その内実

 この合意は、8月11日にホワイトハウスが正式に認めたものだ。

 これにより、エヌビディアは中国市場向けに性能を調整した「H20」、AMDは「MI308」というAIチップの輸出ライセンスを米商務省から取得した。

 両社にとって、巨大な中国市場へのアクセスが再び確保されることを意味する。

 ドナルド・トランプ大統領はこの決定について、H20は「時代遅れ」のチップだとし、「もしこれを承認するなら、国のために(当初は)20%が欲しいと言った」と記者団に語り、取引が自身のトップダウンで進められたことを隠さなかった。

 この事実上の「上納金」という条件は、7月に両社が輸出再開の見通しを発表した際には公にされておらず、市場関係者にとっては想定外のものだった。

 当時、市場は無条件での輸出再開を期待して歓迎したが、その裏では当事者間でこの異例の取引が着々と進められていた。

 米CNBCによれば、アナリストからは「売り上げの85%はゼロよりましだ」(英資産運用会社キルター・シェビオット、ベン・バリジャー氏)と、企業の利益を肯定的に評価する声も上がる。

 巨大な中国市場を競合の中国・華為技術(ファーウェイ)に明け渡すよりは良いという見方だ。