スポーツファッションのフィラが、有名ゴルフ用品ブランド「タイトリスト」などを保有する会社を買収――。ゴルフ業界ではちょっとした話題になったが、韓国の経済界では、それどころか超ビッグニュースになった。

 なぜ、韓国で? 実は、フィラは韓国企業になっていたからだ。今回の買収劇は、韓国の1人のサラリーマンの華麗な成功物語でもあるのだ。

競合制して手に入れた世界トップブランド

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ゴルファーなら知らない人がいない超有名ブランドを韓国企業が手に入れた(写真はソウル市内のゴルフ練習場)〔AFPBB News

 まず、ニュースを整理しておこう。2011年5月20日、米国の複合企業フォーチュンブランズは、傘下のゴルフ用品会社アクシネットを韓国のフィラコリアと未来アセット・プライベートエクイティファンド(PEF)の企業連合に12億ドル強で売却すると発表した。

 アクシネットと言ってもピンとこないかもしれないが、この会社が保有するブランドはすごい。

 まずは「タイトリスト」。ゴルフボールで50%の世界シェアを握り、内外の有名プロが愛用していることで知られる。ゴルフクラブでは、パターの「スコッティ・キャメロン」や「ボーケイ・ウェッジ」も超人気ブランド。ゴルフシューズの「フットジョイ」もこの会社が保有するブランドだ。

 つまり、ゴルファーなら知らない人はいない、それも今の時点でぴかぴかの最高ブランドが売りに出たというわけだ。親会社のフォーチュンブランズはたばこ会社をルーツに持つ老舗の複合企業だが、酒類ビジネスに集中するとして、かねてアクシネットを売却する意向を表明していた。

 買収には、アディダス、ナイキや投資会社のブラックストーンなども名乗りを上げたと言われている。最終的にアディダスとの競争を韓国企業連合が制した。

 韓国メディアによると「韓国企業が世界トップブランドの海外企業のM&A(企業の合併・買収)に成功したのは初めて」という。

 では、タイトリストを買収したフィラコリアとはどんな企業なのか。

実は韓国企業になっていたフィラ

 フィラとは、もちろん、あの有名なスポーツファッションブランドだ。イタリアで1911年に生まれたこのブランドは、今年でちょうど100周年を迎える。1970年代にテニス界のスーパースター、ビョルン・ボルグ選手とスポンサー契約を結び、世界で爆発的にヒットしたブランドになった。

 今も欧米市場で根強い人気だ。日本でも伊藤忠商事が代理店となって、ゴルフウエアなどを積極的に販売している。最近は中国市場でウエアやシューズの売り上げが急増しており、世界シェアをぐんぐん伸ばしている。

 このフィラブランドの世界市場での使用権を持つのが、韓国企業であるフィラコリアなのだ。