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目次

前編から読む(「AIで合理化しコストを下げる会社」と「AIで新しい市場をつくる会社」の分岐点がやって来た

第一歩は「何を新しく創るか」を決めること

 共創AI導入で最初に決めるべきは、効率化の対象ではなく「創造のテーマ」です。

 テーマが曖昧なままだと、現場は自然と既存の効率化案件に引き寄せられてしまいます。

 これは人間の性質として、「今ある課題を解く方が楽だから」です。ここで必要なのは、共創の方向性を明確にする「設計図」になります。

 筆者が試しに作った「共創テーマ・ブリーフ(1枚に要約)」は以下の通りです。

共創テーマ・ブリーフ(1枚に要約)

●解きたい本質課題(顧客・社会の未充足)
●想定インパクト(売上高、新規市場、顧客体験、外部性)
●AIの役割(仮説生成/デザイン探索/シミュレーション/最適化)
●制約条件(倫理・安全・法規・データ権利)
●検証方法(どの指標で成功とみなすか)
●90日で作る「最小実験」(PoX:Proof of eXperiment)

 このブリーフは、単なる計画書ではなく「組織全体を同じ方向に向けるための羅針盤」です。

 共創AIの取り組みは往々にして、部門間の温度差や目的の違いによって頓挫します。

 初期段階でこれを防ぐために、経営層から現場までが同じ共創テーマを理解し、短期の実験(90日以内)で具体的な成果を出すことが重要です。

実践例

●自社の販売データと世界の市場動向データをAIに照合させ、新しい商品カテゴリーを発見し、さらに命名までAIに提案させる。

●製造業では、次世代素材の探索空間をAIで広げ、AI主導で試作シミュレーション→試作→計測→再学習のループを構築する。

●サービス業では、顧客の旅程をゼロベースで再設計し、「通知→行動→満足」の各段階でAIが介入し、最適な提案を行う顧客体験を設計する。

 これらの例はいずれも、効率化ではなく「新しい価値の創造」を目的とした取り組みです。

 重要なのは、スタート地点から「何を創るか」を明確にし、それを短期間で形にして市場に出すこと。

 そうすることで、共創AIの真価が初めて発揮されます。