旅の楽しみが広がる「鉄道乗り放題パス」(写真はイメージ、Natee Meepian/Shutterstock.com)
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 全国のJR線が5日間乗り放題になる「青春18きっぷ(18きっぷ)」。長らく鉄道ファンや旅行好きから親しまれてきたが、2024年度の冬季からルールが大幅に変わり、鉄道に乗ることを趣味とする“乗り鉄”からも不評を買った。

「18きっぷはオワコン」との評判も広がる中、18きっぷを代替するきっぷに注目が集まっている。それらのきっぷは、新たに発売されたわけではなく、以前からJR東日本やJR東海が発売していた。なぜ、急にそうしたきっぷに注目が集まっているのか。フリーランスライターの小川裕夫氏が解説する。

ルール変更で起きた「18きっぷ離れ」

 春・夏・冬は学生が長期休暇に入るため、鉄道利用者が減少すると言われてきた。それを補完する目的で国鉄時代に青春18きっぷ(18きっぷ)が発売された。18きっぷは、全国各地のJR全線が期間中に乗り放題になる「特別企画乗車券」として鉄道ファンだけではなく旅行好きからも重宝されてきた。

 18きっぷは長い歳月でルール変更を繰り返してきたが、2024年度冬季のルール変更は18きっぷの歴史においても大きな転換点になった。

 それまでは、きっぷ1枚で期間中の任意の5日間で使用できたが、ルール変更により5日間“連続”という縛りが設けられた。この変更によって18きっぷは単に鉄道に乗ることだけを楽しむきっぷと化した。

 2024年度冬季から、18きっぷは1万円の3日間用と1万2050円の5日間用の2タイプが新たに発売されることになった。これによりユーザーの選択肢は増えたが、どちらも連続で利用しなければならなくなったのである。

 社会人は言うまでもなく、昨今は高校生や大学生でも5日連続で休みを取ることは難しい。5連休を取れなければ、18きっぷを使用できる環境が整わない。そのため、2024年度冬季からのルール変更は“改悪”という不満が相次いだ。JRは18きっぷの販売状況を明らかにしていないが、このルール変更によって販売数が減少したことは間違いない。

 18きっぷを使って旅行に出るといっても、ずっと鉄道に乗っているわけではない。訪問先で観光名所を巡ったり、ご当地グルメを味わったり、はたまたアクティビティを楽しむといった目的が必ずある。

 そうした観光で時間を費やせば、当然ながら鉄道で移動する時間は短くなる。鉄道移動の時間が短くなれば、18きっぷの元を取ることは難しい。それなら、わざわざ18きっぷを買う必要はなくなる。3日間・5日間連続という縛りが設けられたことで、18きっぷ離れが起きることは誰の目にも明らかだった。