中国の「洗脳教育」の中身
中国共産党は「筆」(宣伝、洗脳)と「銃」(暴力、軍事)の掌握が統治の本質だとしてきた。宣伝、洗脳とはメディアと教育の掌握にほかならない。習近平時代になってイデオロギー統制に力を入れ始めるようになったが、そのイデオロギー統制政策の初期に打ち出したのはご存じのように大学における「七不講(7つのタブー)」だ。話題にしてはならない内容は以下のとおり。
① 普遍的価値、②報道の自由、③公民社会、④公民権利、⑤党の歴史錯誤、⑥権貴資産階級、⑦司法独立
その後、大学、小中学校、高校の教師に対して「新時代教職の十項目の行動指針」を打ち出し、教師は党中央の権威を損なったり党の路線・政策に反したりする言動をしてはならないという通達を行った。この時、かなりの良心的教師は粛清され、現在の教師不足はこの政策の影響もあろうと言われている。
現在、中国の洗脳教育は幼稚園にまで及んでおり、例えば大連の幼稚園で日本兵が描かれたパネルに手榴弾を模したボールをぶつける「愛国教育ゲーム」が行われていたケースも報道されている。いわゆる「紅軍小学校」と呼ばれる革命時代の歴史教育、愛国教育に力を入れる義務教育校も拡大している。
公式サイトによれば2019年5月の段階で中国の紅軍小学校は全国に300校まで増えている。こうした紅軍小学校では、赤い星のついた軍帽をかぶった紅衛兵を彷彿とさせるような制服の小学生たちが、習近平の新時代思想を学習しているという。そういう様子がSNS上の動画などでも垣間見ることができる。普通の義務教育校でも習近平の新時代思想は必須科目だ。
こうして習近平政権の教育改革によって、数学や英語など学力に関する授業時間は削られ、西側の文化や歴史や技術への好奇心は抑制され、一方で西側先進国に対する敵意や悪意を植え付けられ、現実と乖離した中国の偉大さや、偽造された革命時代の輝かしい歴史を信じ込まされるようになった。
こうした中国共産党の長年の洗脳教育の成果として、思考能力や想像力、あるいは好奇心や向上心の欠如した若者が増え、ある者はいわゆるネット紅衛兵のような習近平の熱烈な支持者になり、またある者は気力を失って「躺平主義」(寝そべり主義、何もしないことで中国の圧政と低迷の時代をやり過ごそうとする)に陥っている。