日本的経営の理想的な形、近江商人の「三方よし」

 良いビジネスといえば、例えば、渋沢栄一が唱えた、道徳と経済を両立させるべきとした「論語と算盤」や、公益追求という使命を達成するのに適した人材と資本を集めて事業を行うべきとした「合本主義」などを思い出します。

 最近では、ビジネスに関わる多くの関係者(ステークホルダー)の利害に配慮しながら経営すべきという考え方が主流になっています。世界経済フォーラム(ダボス会議)が提唱する「マルチステークホルダー資本主義」や、経済同友会が提唱する「共助資本主義」なども、こうした私益と公益の両立を図ろうとする試みです。

 また、「パーパス経営」も、企業が存在する根本的な意義や社会的使命を企業理念の中心に据えて、利益追求だけでなく、社会・環境・未来に対する価値創造を目指して経営しようというものです。

 昔ながらの日本的経営の理想的な形として、近年、改めて注目されている近江商人の「三方よし」も、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」というマルチステークホルダーの視点から、取引や事業活動がすべての人にとって良い状態になることを目指すものです。

(文中敬称略)

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