公的な病院の建て替えを進める二つの方法
一つの方向性は、施設の建て替えコストを引き下げるという努力だ。具体的に言えば、BIM(Building Information Modeling)の導入と近代型の工業化建築の採用によって、戸建て住宅や低層の集合住宅のように、病院建築を規格化したり、工業化したりするのだ。
*BIMとは、構造・設備・意匠などの設計から積算、工程管理、メンテナンスの履歴など建設ライフサイクルに関わる情報をデータベースにまとめていくこと。
高騰する建築費の影響をすべてカバーできるとは思わないが、BIMのデータ形式で標準化と共通化を進めれば、一から設計するよりも低コストに仕上がるのは間違いない。
また、病院施設の面積を減らすことも効果的だ。
大きな流れを考えれば、治療の高度化によって入院する患者数や患者一人当たりの入院日数は減る方向にある。病院のスマート化が進めば、会計のためにずっと待っている必要はないので、待合室に今ほどの広さは必要ない。
さらに、重粒子線治療装置のような最先端医療機器は小型化が進んでいるため、医療収入や医療関係者の導線に悪影響を与えることなく、建て替え前の面積を減らすことができる。
こうした細かな積み重ねで建設コストを減らすわけだ。
もう一つのポイントとして、病院の建て替えにPPP(Public Private Partnership:官民連携)の仕組みを活用するということも考えられる。
PPPとは、施設の建設や完成後の運営に、民間の資金やノウハウを活用する仕組みのこと。既に秩父宮ラグビー場やIGアリーナ(愛知県新体育館)、地方空港や自治体所有の有料道路などで用いられている。
詳しくは後述するが、PPPでは施設の建設やその後の運営を踏まえた提案を民間の企業コンソーシアムに求めるため、資金調達や建設段階での発注、完成後の運営などで民間の創意工夫が働きやすく、コスト削減や収益の向上が期待できる。