世界一著名な自動車王だったが…
21世紀が始まってからの約20年間、カルロス・ゴーンは世界一著名な自動車王だった。2つの平凡な自動車メーカーを提携させてルノー・日産アライアンスというグローバルな巨大企業連合を構築し、世界中の批評家たちを驚かせた。
しかしゴーンは、自分の報酬に決して満足していなかった。長年、自分よりも才能のない人間たちが自分より何百万ドルも多く稼いでいるのを目にしていた。彼は悔しさを募らせ、もはやそれは執着となっていた。
2008年に金融危機が起きると、ゴーンは自らその不満を解消すべく動きだし、自分に本来ふさわしいはずの報酬を密かに得られるよう数々の手段を模索した。
そして10年後、経営者としての最後の大仕事、ルノーと日産の合併を成し遂げようとしていた彼は、それが終われば全長37メートルの自家用クルーザーで幸せな結末に酔いしれるつもりだった。合併成功によって巨額の報酬を手に入れ、その金とともに引退し大富豪として余生を送るはずだった。
ゴーンの説明によると、それが実現しなかったのは一部の日産幹部が共謀して彼を失脚させようと画策したからだという。ゴーンの周到な計画は、予想だにしなかった衝撃的な逮捕によって挫折した。味方はみるみる消えていった。政財界のリーダーたちのなかにも、彼を守る者やかばう者はいなかった。