言い訳に使えるトランプの圧力
ベトナムは内心F16を購入したいようだ。しかし北部で陸路国境を接している中国を怒らせることは、絶対に避けなければならない。
これまでベトナムはバンブー外交(竹のようにしなやかな外交)と称して、どの国とも友好関係を維持する政策を続けてきたが、中国が世界第2位の経済大国になった頃からは中国に傾斜していた。中国の経済発展のおこぼれに預かりたいという思いとともに、経済力に支えられた軍事力を恐れていたためだ。
ただここに来て不動産バブルが崩壊し、中国経済に綻びが見え始めた。その一方でベトナムは一人当たりGDPが5000ドルに迫るなど、もはや開発途上国ではなくなりつつある。米国からF16を買うこともできる。F16を導入すれば、南シナ海で中国に勝る軍事力を持つことができる。そうなれば西沙諸島や南砂諸島の問題において、いつまでも中国の言いなりになる必要はない。隠忍自重しなくてもよい。そんな気分になりつつある。
そうは言っても中国は北の巨人である。ベトナムには本格的に中国と対峙する国力はない。そんな逡巡もある。その一方で、トランプの圧力は言い訳に使えるのではないかとも考え始めている。F16を導入したのは米国の圧力に屈しただけと言い訳できる。ディール好きのトランプの出現はF16を手に入れる千載一遇のチャンスになっている。
水面下で密かにそんな話が語られる今日この頃のハノイである。