先の衆議院選挙では、政治とカネの問題を抱えた議員の落選が目立ったが、盛山正仁(前文科大臣)、武田良太(元総務大臣)、牧原秀樹(前法務大臣)、山際大志郎(前衆議院議員)、山本朋広(前衆議院議員)など、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)とかかわりの深かった候補者の落選も目立った。
統一教会は国際勝共連合という保守の政治団体を持っているが、同時に、長年にわたって日本の信者に高額献金をさせて韓国に送金してきた。保守政党を標榜する自民党が日本から搾取する団体となぜ手を組んだのか。『宗教と政治の戦後史 統一教会・日本会議・創価学会の研究』(朝日新聞出版)を上梓した宗教学者の櫻井義秀氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
韓国の嫁不足問題と統一教会の合同結婚式
──海外のメディアから「なぜジャパン・ナショナリズムの象徴的な存在だった安倍元首相が、コリア・ナショナリズムの統一教会の支援をしていたのか」と質問を受けることが多いと書かれています。
櫻井義秀氏(以下、櫻井):安倍元首相は保守で、ジャパンファーストの政治家ではなかったのか。そんな安倍元首相がなぜコリアファーストの宗教団体と組んできたのか。矛盾しているではないか。そういう海外の方からの質問ですね。日本の保守、自民党の理念とはいったい何なのか、海外のメディアにはよく理解できないということです。
安倍元首相に限らず、自民党の政治家が統一教会と強い関係を結んでおり、その数が国会議員、地方議員含めて100人から200人あまりも存在する。日本の保守を自認している政治家なのに国益や国民の権利を重視しないのか。私は本来、日本のメディアが(特に保守系メディアや保守系の論客こそが)この点をもっと強調すべきだと思います。
韓国から入ってきた新宗教が日本で霊感商法に乗りだし、年間数千億円も資金を調達して韓国に送金してきました。そればかりではありません。日本で伝道し、統一教会の信者になった日本人の女性信者約7000人を合同結婚式の結果、韓国に送り込んでいます。現在も6000人あまりが韓国に滞在しています。
こうした女性は韓国人の男性と結婚しましたが、実は、その男性はかなりの割合で統一教会を信仰していません。韓国の地方では嫁不足問題があり、これを解消するために、統一教会が結婚ブローカーのような役割を果たし、そこに飛びついた男性と日本人の女性が結婚した。韓国で困窮した生活をされている日本人女性はたくさんいます。
こうした日本人女性の多くは60歳前後になり、もはや信仰を失っている方もかなりいます。
日本に帰りたいのだけれど、親が高齢だったり、亡くなっていたりして現実的に帰れない。日本で霊感商法に従事したため、親族や友人との関係も切れている。しかも、自分の夫や子供は韓国人ですから、家族で日本に帰るわけにはいかない。そんな日本に帰りたくとも帰れない日本人女性たちが数千人の規模で存在するのです。