「どうして韓国には、グローバル市場でトップを独走するサムスン電子のような企業があるのに、世界的な銀行はないのか」

 サムスンの場合、長年かけて技術開発力を磨き、積極投資と卓越したマーケティング力で現在の地位を築いた。

 金融業界というのは、どうも勝手が違うようだ。世界的な銀行とは言うが、求められているのは規模だ。とにかく、大きいことはよいことのようだ。

 2011年5月17日、韓国政府の公的資金管理委員会は、57%出資する金融最大手のウリィ金融持ち株会社の民営化計画を発表した。「30%以上の株式の取得」を条件に、6月29日までの期限で入札を実施すると発表した。政府主導でのメガバンク育成策が動き出したのだ。

 2009年末、韓国に世界的な銀行がないことの深刻さを李明博(イ・ミョンバク)政権に痛感させる出来事があった。

原発入札でUAEに突きつけられた要求

UAEの原発プロジェクト、韓国の企業連合が受注

2009年12月、UAEのアブダビで、原発を含む経済協力で合意し握手する韓国の李明博大統領(左)とUAEのハリファ・ビン・ザイド・ナハヤン大統領〔AFPBB News

 当時、韓国政府は、官民を挙げてアラブ首長国連邦(UAE)での原子力発電所商談の受注に全力を傾けていた。

 最大のライバルであるフランス企業連合を振り切るため、李明博大統領が直接何度もUAEの皇太子に電話をするほどの入れ込みようだった。

 最終的な勝負はもちろん価格。韓国側は「破格の値段」を提示した。その中には工事費の融資など資金援助なども入っていたようだが、ぎりぎりでUAE側から出た要求に仰天した。

 「工事履行のため、信用等級AA(ダブルA)以上、資産規模世界50位以内の銀行の保証書を提出」することを求められたからだ。

 こんな銀行は韓国にはない。結局、韓国政府は、英スタンダードチャータード銀行に保証書の提出を求めた。手数料を含め、2000億ウォン(1円=13ウォン)もの費用がかかったと言われている。