熱エネルギーは1年に約100kmの速さで移動

 火山の噴火と地震の発生場所はずっと同じです。約10億年前の地球の大変動により、環太平洋地域は深く裂けて熱水が上がってきて、岩石をすっかり変えてしまいました。その後もマグマが噴き出し続けて火山をつくり、地震を頻繁に発生させる場所になったのです。それが今も続いていて、環太平洋火山・地震帯と呼ばれる、火山と地震がペアで起きる場所になったのです。

 熱エネルギーが通りやすく、たまりやすい場所でもあるので、高温化する場所や岩盤の割れやすい所が、10億年間もほとんど変わらなかったのです。このため熱エネルギーが移送されることによって生じる火山の噴火地点や地震の起こる場所はいつも同じです。

南海トラフM9地震は起きない』(角田史雄・藤和彦著、方丈社)
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 熱エネルギーは1年に約100kmの速さで移動します。このため、インドネシアやフィリピンで地震や火山の噴火が起きた場合、その何年後に日本で地震や火山の噴火が起きるかが、ある程度予測できると考えています。火山の噴火から地震発生の予兆を捉えることも可能です。

 東アフリカにも南太平洋以外のスーパープリュームの湧昇場所があります。東アフリカからの熱移送ルートは、地中海→イタリア→トルコを経由して、ヒマラヤ山脈に行き着きます。

 2つのスーパープリュームからの熱移送は、どちらもヒマラヤに辿り着き、地下700kmあたりで合流して地面を押し上げることで、世界最高峰の山々の形成を後押ししたと考えています。

 以上が熱移送説の概略です。

【連載:南海トラフ地震は起きるのか】
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角田 史雄(つのだ ふみお)
1942年群馬県生まれ。埼玉大学名誉教授。 1973年、理学博士号取得。1982年、埼玉大学教養部教授。1995年、埼玉大学工学部教授。2006年、埼玉大学理工学研究科教授。2008年より現職。埼玉県大規模地震被害想定委員、埼玉県環境科学国際センター研究審査委員などを歴任。 主な著書に『地震の癖 いつどこで起こって、どこを通るのか?』『首都圏大震災 その予測と減災』(以上、講談社+α新書)などがあるほか、藤和彦との共著に『次の「震度7」はどこか! 熊本地震の真相は「熱移送」』(PHP 研究所)、『徹底図解 メガ地震がやってくる! 』(ビジネス社)がある。