3. 拡大する広告掲載枠

 3つ目の理由として、会員向けの動画配信サービス「Prime Video」など、新たな広告掲載枠の拡大が挙げられる。これにより、同社はより多くの広告収益を得るだけでなく、得られたデータを顧客情報に紐付けることで、より精度の高いターゲティング広告を配信できるようになり、結果として広告事業全体の成長につながるという好循環を生み出している。

活況を呈す「リテールメディア」

 小売企業が自社のウェブサイトやアプリなど自社プラットフォームで展開する広告媒体「リテールメディア」が活況を呈している。英広告会社WPP傘下グループエムのリポートによると、リテールメディアの世界広告収入は今後も順調に伸び、28年にはテレビの広告収入(コネクテッドテレビ=ネット接続して動画配信を利用するテレビを含む)を上回る見通しだ。

 リテールメディアは24年に前年比17.5%増、25年に13.5%増で推移すると予測する。リテールメディアの伸び率はデジタル広告の中で最も高い。

「ファーストパーティーデータ」を利用

 広告主にとっては、出稿先を多様化できるというメリットがある。ネット広告市場では、米グーグルと米メタが先行しており、この2社による「複占」状態が続いている。これに対し、リテールメディアでは、小売業者が自社サイトで独自に収集した購買履歴などの「ファーストパーティーデータ」を利用する。広告主にとってはプライバシー侵害へのリスクを回避しながら、効果の高い広告を出せるというメリットがある。

 ただしイーマーケターは、「アマゾンにとって主力のEC事業とリテールメディアは密接に結びついており、機会と同時に課題ももたらす」と指摘する。EC事業の成長鈍化が長引けば、リテールメディアの収益を伸ばすことが困難になるという。