ラグビーワールドカップで日本代表はサモアに28―22で勝利し、10月8日のアルゼンチン戦に勝利すれば、決勝トーナメント(ベスト8)進出が決まる。アルゼンチンは昨年、ニュージーランドやイングランドに勝利し、その後も南アフリカと1点差の接戦を演じるなど、フィジカルの強さに加え、高いスキルも兼ね備えた強敵だが、今の日本の力からすれば決して勝てない相手ではない。そこで、サモア戦での日本の戦いを振り返りつつ、アルゼンチン戦勝利のための条件について考察していきたい。
サモア戦の勝因は「セットプレーとディフェンスの安定感」
筆者が考えるサモア戦勝利の最大のポイントは、セットプレー(スクラム、ラインアウト)の安定だ。
前半2つのトライはいずれもスクラムを起点として取ったもの。事前にデザインされた形で相手を崩し、トライにまでつなげた。スクラムがしっかりと安定していたことで、次の攻撃をスムーズに遂行することができた。
他のスクラムについても、後半最後にコラプシング(スクラムやモールを故意に崩す反則)を取られた1本以外は、おおむね安定していた。あのスクラムについては原因を究明して、しっかりと対策を講じてほしいが、全体としては心配ないだろう。
ラインアウトも、これまでの不安定ぶりから考えると、非常に安定していたと言える。HO(フッカー)堀江翔太がイエローカードでシンビン(一時的に試合から離れること)となっている時間帯に、FL(フランカー)リーチ マイケルが投げ入れ、ボールを奪われる場面もあったが、これは致し方あるまい。
後半のトライは、ゴール前でのラインアウトからモールを押し込んで取ったもの。日本のトライはすべてセットプレーが起点となっていた。次戦もセットプレーの安定は必須だが、これについては、あまり心配はしていない。
このあとアルゼンチン戦勝利のための条件について述べるが、まずはセットプレーが安定しているという前提での話だと理解していただきたい。
セットプレーの安定とともに、日本はこれまでの試合同様、ディフェンスが非常によかった。試合直後に集計されたスタッツ(試合全体のプレー統計)によれば、サモアのタックル成功数は84、タックルミスは18でタックル成功率82.4%だったのに対し、日本はタックル成功数184、タックルミス29でタックル成功率86.4%。
タックルというのはとてもきついプレーなので、回数が増えれば増えるほどミスも多くなるのが普通だ。しかし、日本はサモアよりも100回以上も多くタックルしたにもかかわらず、成功率でも上回った。
サモア戦では、どの選手もタックルが良かったが、特にFW第三列、FLリーチ マイケル、FLピーター・ラブスカフニ、No.8(ナンバーエイト)姫野和樹の3人のディフェンスは非常に良かった。
タックルの高成功率によるディフェンスの安定は、この試合の大きな勝因の一つ。次戦でこのディフェンスの安定度を保つことも、勝利への大前提となる。