8月18日、サウジアラビアのアル・ヒラルへ合流するためにリヤドのキング・ハーリド国際空港に到着したネイマール(写真:ロイター/アフロ)

一気に変わった移籍市場の風景

 1500億円――。

 サウジアラビアがこの夏に補強に費やした移籍金総額だ。

 1年前は世界のスター選手が絡む大型移籍などなかったリーグである。サウジアラビアの登場は2023年のサッカー界における最大の出来事だった。

 ネイマール、ベンゼマ、マネ、カンテ、マフレズら、それぞれのポジションで世界のトップにいるような有名選手たちがサウジプロリーグ(SPL)へと向かった。

 2023年の夏の移籍市場で投じられた総額を見ると、プレミアリーグが4000億円を超えており、業界における一強状態をキープしている。しかし過去10年でプレミアとともに欧州で覇権を争ってきたスペインのラ・リーガはわずか700億円。資金難に苦しむバルセロナが過去のように巨額の移籍金を投じられなかったことが大きいものの、SPLの半分以下である。

 たったひと夏で、サウジはサッカー界の移籍市場における主役のひとつとなった。欧州がすべてを支配していた時代は終わりつつある。

 サウジサッカーの新たな幕開け、その前夜ともいえる昨年12月に首都のリヤドを歩いた。

 カタールワールドカップ期間中だったこともあり、リヤドのスーク(市場)には世界のスター選手のグッズが並べられていた。クリスティアーノ・ロナウドにネイマールらの顔があちこちに見られ、広告にもサッカー選手は多く起用されていた。彼らがいつか自国リーグでプレーすると想像していた人は、その頃は誰もいなかった。

 その時はまだ、彼らのリーグはなにものでもなかったからだ。世界の誰もサウジアラビアリーグなど見ようとも思わなかったし、試合が放映されている国も限られていた。サッカーは欧州を中心に動いており、最終目的地として欧州を目指すのは当たり前のことだった。