プーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表であるエフゲニー・プリゴジンが、自家用飛行機の墜落事故で死亡してから1週間が経つ。事故の原因はまだ明らかになっていないが、反乱の首謀者を闇に葬ることによって「一件落着」させたプーチンは、来年の大統領選挙での勝利に向けた準備を加速させている。

秘密警察国家

 プリゴジンの葬儀は、8月29日、サンクトペテルブルクで行われた。家族と友人のみが出席して非公開で行われ、ポロホフスコエ墓地に埋葬された。

プリゴジンの非公開の葬儀が行われた翌8月30日、ポロホフスコエ墓地にあるプリゴジンの墓を何人もの人が訪れた。写真の迷彩柄の服を着た男性の肩にはワグネルのマークがついている(写真:ロイター/アフロ)

 墜落事故の原因究明が行われているが、まだ結果が出ていない。事故機のメーカーがあるブラジルの航空事故調査機関は、ロシア側から、国際的ルールに基づいた調査は当面行わないという連絡があったという。ロシアのみの調査で真相が分かるのかどうか不明である。

 これまでの様々な情報を基に総合的に見れば、プーチン政権による暗殺と考えるのが常識的な判断である。

 プリゴジンの反乱から死に至る経緯を見ると、プーチン政権下で、ロシアがKGB(FSB)国家、つまり秘密警察国家の色彩をますます濃くしていっていることがよく分かる。

 大物スパイであるリヒャルト・ゾルゲに憧れてKGBに就職したのがプーチンである。ベルリンの壁崩壊後に政治の世界に転身するまでは、KGBの対外諜報部に配属され、東ドイツのドレスデンで勤務してきた。その職業体験から、骨の髄までKGBの発想がプーチンに染み込んでいる。