- 中国の秦剛外交部長(外相)が突如として表舞台から姿を消して3週間あまりが過ぎた。
- ダブルスパイ説がある美人キャスターとの不倫で取り調べを受けているとの噂もある。
- 米国との架け橋になり得た人物だけに、秦剛が不在となれば両国のさらなる関係悪化が懸念される。
(福島 香織:ジャーナリスト)
中国外交部長(外相)の秦剛の動静が不明のまま3週間あまりが過ぎた。対米外交の要のはずなのに、イエレン米財務長官の訪中時も、ケリー米大統領気候変動担当特使の訪中時も姿をみせなかった。
7月14日にジャカルタで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム外相会議に出席予定だったにもかかわらず、11日に急きょ、中国からの参加者は王毅に変更されることになった。建前の理由は健康上の問題だが、明らかに異常事態が発生していることは、外交部の定例記者会見における毛寧報道官の発言からも明らかだ。いったい秦剛に何が起きているのか。そしてその結果、中国の外交路線は何か影響を受けるのだろうか。
17日の外交部定例記者会見では外国メディアから次々と秦剛の動静について質問が出た。「秦剛はいつ復帰できるのか」という質問に、毛寧は「提供できる情報はない」と答えた。秦剛が香港フェニックステレビの女性記者と不倫して、取り調べを受けているという噂に言及されると、「詳しい事情は知らない」と答えた。「秦剛はまだ外交部長の立場にあるのか」と問われれば、「外交部サイトで確認してください」と回答。「秦剛が不在で外交に影響はでないのか」との質問には、「中国の外交活動はすべて正常に行われている」と答えたのだった。
秦剛の不倫問題の質問を受けているときに、毛寧が笑いを漏らす場面があった。笑いが漏れるということは、すでに秦剛は彼女の上司ではなくなっていることがうかがえた。秦剛が上司なら、彼の名誉のために、噂を否定したり怒ってみせたりする必要がある。
秦剛の不在についての質問は14日の定例記者会見でも出ている。その時の汪文斌報道官は、神妙な面持ちで16秒間沈黙した後、「関連の情報で紹介できるものはない」と短く答えて、すぐ別の質問を促した。先週と今週では報道官の態度が大きく違うので、秦剛の状況はよりはっきりと失脚の可能性が高くなったとみられている。
毛寧の記者会見の回答に従って外交部サイトを確認すると、6月25日に秦剛の外交部長としての活動記録は掲載されていた。